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脳卒中後の痙縮に関するストーリー
登場人物
金子医師:脳卒中リハビリテーション専門医
丸山さん:脳卒中後に痙縮を経験している患者
金子医師:「丸山さん、今日は脳卒中後に現れる筋肉の痙縮についてお話しましょう。丸山さんは筋肉が硬くなることで動かしにくくなったり、痛みが出たりすることがありませんか?」
丸山さん:「あります!特に朝や寒い時に筋肉が硬くなって痛むことがあって…これって何が原因なんでしょうか?」
金子医師:「脳卒中で脳がダメージを受けると、筋肉に指令を出す神経の働きが悪くなり、筋肉が適切にリラックスする方法が分からなくなるんです。脳と筋肉の間の”通信”がうまくいかない状態ですね。」
丸山さん:「なるほど、それで筋肉がずっと硬いままになっちゃうんですね。」
金子医師:「そうなんです。その結果、筋肉が緊張し続ける痙縮という症状が起こり、これが痛みの原因になります。でも、痙縮を緩和する方法もいくつかありますよ。」
丸山さん:「どうすればいいですか?」
金子医師:「リハビリが効果的です。リハビリで筋肉を少しずつ動かすことで、脳が筋肉と再びうまく連携を取れるようになる可能性があります。また、ボツリヌス療法や温熱療法といった方法もありますので、症状に合わせて組み合わせていきましょう。」
丸山さん:「リハビリって、痛みがあるときはやりたくないなと思う時もあるんですが…」
金子医師:「それも自然な気持ちです。ただ、続けることで少しずつ効果が出ます。神経は新しく再生する力がありますから、リハビリを頑張ることで脳と筋肉の”通信”を再構築できますよ。」
丸山さん:「分かりました。痛みに負けず、少しずつリハビリを続けていきます。」
金子医師:「分からないことがあればいつでも相談してくださいね。丸山さんのペースで続けましょう。」
脳卒中後の痙縮について
痙縮のメカニズム
脳卒中により脳の特定部位が損傷を受けると、筋肉をコントロールする神経回路が影響を受けます。これにより、筋肉が常に緊張した状態、すなわち「痙縮」が発生します。痙縮は動作やストレッチに対して抵抗を示し、筋肉が硬くなるため関節の動きが制限されます。
痙縮による筋肉の硬直と痛み
痙縮が続くと、筋肉や関節に過剰な負荷がかかり、痛みが生じます。これにより、体を動かすことが難しくなり、さらに筋肉が硬直してしまうという悪循環に陥ることがあります。慢性的な痛みは患者の生活の質を低下させ、治療やリハビリへの意欲を削ぐ原因にもなります。
脳と筋肉のコミュニケーション障害
正常な神経伝達の仕組み
通常、私たちの脳と筋肉は神経を介してコミュニケーションをとっています。脳は神経を通じて筋肉に指令を送り、筋肉が動きや緊張状態を返すことで、バランスの取れた動作が可能となります。この双方向の情報伝達により、スムーズな動きや安定した姿勢が維持されます。
脳卒中による神経伝達の断絶
脳卒中で脳が損傷を受けると、脳と筋肉のコミュニケーションが遮断されます。このため、脳は筋肉の状態を把握できなくなり、筋肉に適切な指令を送ることができなくなります。これが筋肉の緊張や痙縮を引き起こす大きな要因です。
脊髄の役割と限界
脊髄反射と筋肉の保護
脳と筋肉のコミュニケーションが断たれた場合、脊髄が筋肉の制御を代わりに引き受けることがあります。脊髄は、特定の反射反応によって筋肉の緊張状態をある程度保つ役割を担います。これは筋肉が過度に伸ばされて裂けないようにするための保護メカニズムです。
持続的な筋収縮の原因
脊髄は筋肉の詳細な調節ができないため、筋肉が常に軽く収縮した状態に保たれます。これが痙縮を生み出し、筋肉の硬直や痛みの原因となります。
痛みの緩和と治療法
リハビリテーションの重要性
痙縮による痛みを軽減するには、まず脳と筋肉の正常なコミュニケーションを回復することが重要です。そのために効果的なのがリハビリテーションであり、運動療法や理学療法を通じて脳と筋肉の間に新しい神経経路を再構築することが期待されます。
神経可塑性による回復の可能性
神経可塑性は、脳が損傷を受けても新たに神経回路を形成し、筋肉と再びコミュニケーションをとる能力のことです。リハビリで同じ動作を繰り返すことで、脳はその動作に関与する新しい経路を強化し、筋肉の硬直が徐々に和らいでいくと考えられています。
痛みを軽減する具体的な方法
・ストレッチと運動療法:筋肉を優しく伸ばすことで硬直を和らげます。特に、筋肉をリラックスさせるストレッチが有効です。
・物理療法:温熱療法や電気刺激は筋肉の緊張を緩和し、痛みの軽減に役立ちます。
・姿勢矯正:姿勢が悪いと筋肉に不自然な負荷がかかります。正しい姿勢を意識することで、筋肉への負担を軽減できます。
リハビリテーションの実践
自主練習の取り組み方
リハビリの成功には、自主的なエクササイズの継続が欠かせません。自分に合った内容で毎日練習することが、痙縮の緩和と神経可塑性の促進に役立ちます。
専門家との連携
理学療法士や作業療法士などの専門家の指導を受けることで、より効率的なリハビリが可能です。個別に合わせたプランを立て、進捗を確認しながら進めることが推奨されます。
自主練習について詳しく解説!
手(上肢)の練習 足(下肢)の練習
最新の研究と治療アプローチ
ボツリヌス療法
ボツリヌス療法は、痙縮の原因となる筋肉にボツリヌストキシンを注射し、一時的に筋肉の緊張を緩和する治療法です。他のリハビリ法と組み合わせることでより効果が期待でき、痛みや筋肉の硬直が軽減されることが多く報告されています。
※詳しくはこちら(ボツリヌス療法について詳しく解説しています)
経頭蓋磁気刺激(TMS)
TMSは、非侵襲的に脳を磁気で刺激する治療法です。脳卒中後の神経可塑性を促進し、筋肉とのコミュニケーションの回復を助ける可能性が期待されています。
TMSの治療原理
TMSは、磁場を使って脳内の神経細胞を刺激します。具体的には、電磁コイルを頭皮に当て、強力な磁場を瞬間的に発生させます。この磁場が頭蓋骨を通過して脳の神経細胞に影響を与え、電流を誘発します。この電流が神経細胞を活性化させ、脳内の神経ネットワークの活動を調整します。
・神経可塑性の促進:TMSは神経可塑性、つまり脳が新しい神経経路を形成したり、損傷後に自らを修復したりする力を促進します。脳卒中で損傷した領域の周辺を刺激することで、脳と筋肉の間の通信を再構築することができます。
・脳の抑制・活性化:低頻度のTMS(1Hz以下)は脳の活動を抑制し、高頻度のTMS(5Hz以上)は脳の活動を促進する作用があります。脳卒中の場合、損傷側の脳の機能を高めたり、健側の過剰な活動を抑えたりすることでバランスをとることができます。
薬物療法の進歩
近年、抗痙縮薬の開発が進み、患者の状態に応じた薬物療法が選択可能となりつつあります。薬物療法はリハビリと併用することで、より効果的に痙縮と痛みを緩和できます。
まとめ
脳卒中後の痙縮による筋肉の硬直と痛みは、脳と筋肉のコミュニケーション障害が主な原因です。リハビリテーションや最新の治療法を活用して、神経可塑性を促しながら回復を目指しましょう。専門家の指導のもと、適切な方法で継続することで、生活の質を向上させることが可能です。
参考となる情報源
・日本リハビリテーション医学会:「脳卒中リハビリテーションのガイドライン」ジャルム
・厚生労働省:「脳卒中の現状と対策」厚生労働省
・e-ヘルスネット(厚生労働省):「脳血管障害・脳卒中」e-ヘルスネット
・日本リハビリテーション医学会:「脳卒中のリハビリテーション」ジャルム
・厚生労働省:「脳卒中を経験した当事者(患者・家族)の声」厚生労働省
・厚生労働省:「脳卒中の治療と仕事の両立 お役立ちノート」厚生労働省
・日本脳卒中協会:「脳卒中患者・家族の実情調査 中間報告」厚生労働省
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国家資格(作業療法士取得)
順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務後,
御茶ノ水でリハビリ施設設立 7年目
YouTube2チャンネル登録計40000人越え
アマゾン理学療法1位単著「脳卒中の動作分析」他
「近代ボバース概念」「エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション」など3冊翻訳.
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