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2024.10.17 脳卒中

【2024年版】視床痛(CPSP)とは?脳卒中後の痛みとその対処法を徹底解説

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脳卒中後の視床痛についてのストーリー


登場人物
・金子先生:脳卒中後のリハビリと疼痛管理の専門医
・丸山さん:脳卒中後に視床痛(CPSP)が心配な患者さん




金子先生と丸山さんが診察室に座っている。丸山さんは少し不安そうな顔をしている。


金子先生:「こんにちは、丸山さん。今日は脳卒中後の痛みについて心配されているとのことですが、どんな痛みが気になりますか?」

丸山さん:「そうなんです。脳卒中の後から、右手や足に不思議な痛みがあるんです。熱く感じたり、針で刺されたような感覚が突然出てきて…。これってよくあることなんでしょうか?」

金子先生:「なるほど。今お話しいただいたような痛みは、脳卒中後に起こる視床痛というものかもしれません。これは医学的には**脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)**とも呼ばれます。」

 

金子先生:「脳卒中が起きた時、脳の特定の部分、特に視床という場所が損傷を受けることがあります。この視床は、体から脳へ感覚を伝える中継地点なんですが、ここがダメージを受けると、脳が正しい痛みの信号を送れなくなるんです。その結果、普通の刺激でも強い痛みや不快な感覚が起こることがあります。」

丸山さん:「なるほど。だから、ただ触れたり、温度が変わっただけで痛みが出てくるんですね。」

金子先生:「そうです。痛みの感じ方も、熱い、冷たい、刺すような痛みといったさまざまな形で現れることがあります。これが視床痛の特徴です。」

丸山さん:「そんな痛みって、どうやって治療すればいいんでしょうか?ずっと続くんですか?」

金子先生:「治療は個人によって異なりますが、まずは三環系抗うつ薬抗てんかん薬を使うことが多いです。これらの薬は、脳の神経伝達を調整して痛みを和らげるのに役立ちます。例えば、アミトリプチリンガバペンチンなどですね。痛みがひどい場合には、オピオイドを使うこともありますが、慎重に考える必要があります。」

丸山さん:「薬以外には何か方法はありますか?」

金子先生:「もちろんです。薬物療法に加えて、理学療法や**経皮的電気神経刺激(TENS)**などの非薬物療法も効果があります。適度な運動やリラクゼーションが痛みを軽減することも多いです。」





金子先生
:「視床痛は、身体の痛みだけでなく心理的な影響も大きいんです。長引く痛みが続くと、不安やうつが生じやすくなり、それがさらに痛みを強く感じさせることがあります。ですから、心のケアも重要です。」

丸山さん:「確かに痛みが出るとイライラして、眠れなくなることもありますね…。」

金子先生:「そうですよね。カウンセリング行動療法も、痛みと上手く付き合うために効果的です。また、家族のサポートも大切です。家族と一緒に、無理なくリハビリを進めることで、気持ちの面でも少し楽になると思います。」


金子先生:「丸山さん、まずは軽い運動リラクゼーションを日常に取り入れながら、最初にお話しした薬物療法を試してみましょう。それに加えて、必要に応じて理学療法士ペインクリニックにも連携していきます。CPSPは治療が長期にわたることもありますが、継続的なケアで改善することが期待できます。」

丸山さん:「そうですね。少し安心しました。家族とも相談して、まずは始めてみます。」

金子先生:「ええ、焦らずに一歩一歩進めていきましょう。何か不安なことがあればいつでも相談してくださいね。」




丸山さんは、金子先生の説明を受けて治療とサポートの選択肢について理解を深め、前向きな気持ちで治療に取り組む決心をします。


目次

  1. はじめに
    ・脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)とは
    ・患者への影響と重要性

  2. CPSPの概要と症状

    ・発症率と発症時期
    ・疼痛の特徴と感じ方
    ・灼熱感、凍結感、刺すような痛みなど
    ・感覚異常と日常生活への影響

  3. 原因と病態生理

    ・視床の役割と損傷メカニズム
    ・神経伝達の異常による疼痛発生

  4. 診断とリスク要因

    ・診断の難しさとポイント
    ・他疾患との鑑別
    ・年齢や併存疾患との関連性

  5. 疼痛の誘発・減弱因子

    ・誘発因子:運動、温度刺激、接触、情動
    ・減弱因子:軽負荷運動、温熱・冷却療法、安静

  6. 治療法

    薬物療法
    ・三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)
    ・抗てんかん薬(ラモトリギン、ガバペンチン、プレガバリン)
    ・オピオイドの使用と注意点
    ・非推奨の薬物(NSAIDs、局所麻酔薬など)

    非薬物療法
    ・理学療法・運動療法
    ・マッサージ・鍼灸療法
    ・経皮的電気神経刺激(TENS)
    ・ペインクリニックでの治療

  7. 心理的影響とサポート

    ・不安、うつ病、睡眠障害への対応
    ・行動療法と心理的支援の重要性

  8. 患者と家族へのアドバイス

    ・日常生活での工夫と注意点
    ・リハビリテーションの取り組み方
    ・支援体制の活用

  9. まとめ

    ・CPSPへの総合的な理解と対応策
    ・早期介入と継続的ケアの重要性

  10. 参考となる情報源

    ・推奨される文献やウェブサイト
    ・専門家による最新ガイドライン





1. はじめに  脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)とは?

**脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)**は、脳卒中後に起こる神経障害性疼痛の一種で、難治性の慢性疼痛として知られています。脳卒中患者の約8~11%が発症すると推定され、脳卒中から数日後に始まることもあれば、数年後に発症することもあります。この疼痛は、日常生活やリハビリの進行を大きく妨げるため、患者にとって大きな負担となります。

CPSPは、単に身体の痛みだけでなく、心理的苦痛も伴うことが多く、生活の質を著しく低下させる要因です。患者自身はもちろん、周囲の家族にとっても理解とサポートが必要不可欠です。






2. CPSPの概要と症状

CPSPの主な特徴は、脳卒中後に起こる異常な痛みです。患者はしばしば灼熱感凍結感針で刺されるような痛みを感じ、時には骨の芯から疼くような深い痛みを訴えることもあります。また、軽い刺激や接触で激しい痛みが引き起こされることがあり、日常生活に支障をきたします。

痛みの発現は個人差が大きく、持続的な痛みが続く場合もあれば、断続的に現れることもあります。これにより、患者は物理的な苦痛に加え、心理的なストレスや不安、さらにはうつ病などを併発するリスクが高くなります。


3. 原因と病態生理

CPSPは、脳卒中によって損傷を受けた脳の特定部位、特に視床と呼ばれる領域の障害が関与しています。視床は、感覚情報を体のさまざまな部分から受け取り、それを脳の他の部位に伝える役割を担っています。この視床が損傷を受けると、脳が体の痛みや感覚を正しく処理できなくなり、結果としてCPSPのような異常な痛みが生じます。

脳卒中により損傷した神経経路は、通常の感覚情報を誤って解釈し、痛みとして感じさせます。このメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、神経の再編成や伝達物質の変化が関連していると考えられています。


4. 診断とリスク要因

CPSPの診断は、特に発症初期において難しいとされています。なぜなら、脳卒中後の症状は多岐にわたるため、他の後遺症や疾患と痛みを区別することが難しいからです。一般的には、脳卒中後に異常な感覚や痛みが生じた場合、まずはCPSPを疑います。

診断においては、患者の痛みの特徴や経過、感覚異常の有無を確認し、他の原因による疼痛との鑑別が行われます。また、痛みの程度を測るために疼痛評価スケールも使用されます。リスク要因としては、脳卒中の部位や重症度が挙げられますが、年齢や性別は明確なリスク要因とはされていません。



5. 疼痛の誘発・減弱因子

CPSPの疼痛は、さまざまな要因によって引き起こされます。運動温度刺激(特に冷感)接触が痛みを誘発する主な要因として挙げられ、時には情動的なストレスも痛みを悪化させることがあります。軽い触れ合いや温度の変化など、通常では痛みを引き起こさないような刺激でさえ、CPSP患者には強い痛みを伴うことがあります。

一方で、軽い運動温熱療法冷却療法などが痛みの軽減に役立つ場合もあります。痛みが慢性化すると、心理的な要素も影響してくるため、リラクゼーションやストレス管理も重要な対処法となります。





6. 治療法

CPSPの治療には、薬物療法非薬物療法があり、それぞれ患者の症状に応じたアプローチが選択されます。

薬物療法

CPSPにおいては、一般的な鎮痛剤である**非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)**は効果が薄いため、使用は推奨されていません。代わりに、以下の薬物が第一選択肢として使用されます。

  • 三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、ノルトリプチリンなど):疼痛緩和に効果があり、長期的な使用も比較的安全です。
  • 抗てんかん薬(ラモトリギン、ガバペンチン、プレガバリン):神経の興奮を抑制することで、痛みを軽減します。
  • オピオイド(モルヒネなど):重度の痛みにはオピオイドが使用されることもありますが、長期使用には慎重な判断が必要です。

非薬物療法

薬物治療に加えて、理学療法リラクゼーションなどの非薬物療法も重要です。

  • 理学療法:軽い運動やストレッチを取り入れることで、痛みの軽減やリハビリの進行をサポートします。
  • マッサージや鍼灸:これらの治療はリラックス効果があり、慢性的な痛みの緩和に有効とされています。
  • 経皮的電気神経刺激(TENS):皮膚に電流を流すことで神経を刺激し、痛みを軽減します。




7. 心理的影響とサポート

CPSPは肉体的な痛みだけでなく、心理的な苦痛も伴います。多くの患者が不安うつ病を併発し、これらが痛みをさらに悪化させる悪循環に陥ることがあります。また、痛みによって睡眠障害を引き起こし、心身ともに疲労が蓄積することも少なくありません。

心理サポートの重要性

CPSPの治療においては、身体の治療だけでなく心理的なケアも非常に重要です。特に以下のアプローチが効果的です。

  • 行動療法:痛みへの対処スキルを学び、痛みとの付き合い方を改善します。
  • メンタルヘルスの支援:心理カウンセリングやうつ病、不安の治療により、患者の心の負担を軽減します。



8. 患者と家族へのアドバイス

CPSPは患者だけでなく、その家族介護者にとっても大きな課題です。適切なサポートを提供するためには、CPSPについての理解を深め、日常生活での工夫を取り入れることが重要です。

日常生活での工夫

  • 運動と活動のバランス:過度な活動を避けつつ、適度な運動を行うことで疼痛が軽減されることがあります。
  • 環境の調整:例えば、温度の変化に敏感な患者には、室温を適切に保つ工夫が有効です。

リハビリテーションの進め方

  • 段階的なアプローチ:リハビリは無理なく、段階的に進めることが推奨されます。
  • サポート体制:家族が積極的にリハビリに関与し、励ましながら共に取り組む姿勢が重要です。

支援団体やコミュニティの活用

  • 患者支援グループ:同じ経験を持つ他の患者や家族と情報交換することが精神的なサポートとなります。






9. まとめ

CPSPは脳卒中後に発症する難治性の疼痛ですが、早期の介入継続的なケアによって症状の改善や生活の質の向上が期待できます。痛みの治療には、薬物療法や非薬物療法が組み合わされ、個々の患者に合わせた治療計画が立てられます。また、痛みだけでなく、心理的なサポートや日常生活での工夫も不可欠です。

CPSPを克服するためには、患者と家族の理解と協力が重要です。日々の生活の中で適切なサポートを提供し、痛みと上手に向き合うことで、患者の生活の質を向上させることが目指されます。




10. 参考となる情報源

診療ガイドライン

  • American Heart Association/American Stroke Association (AHA/ASA) Guidelines
    AHA/ASA 公式サイトでは、脳卒中後の管理と疼痛治療に関する最新の推奨ガイドラインが提供されています。
  • 日本脳卒中学会ガイドライン
    日本脳卒中学会が提供する脳卒中後の管理とリハビリテーションに関する日本語のガイドライン。

患者支援団体やリソース

  • National Stroke Association(米国脳卒中協会)
    公式サイトでは、脳卒中後の疼痛管理やリハビリに関する資料に加え、CPSPについての情報が提供されています。
  • Stroke Foundation(オーストラリア脳卒中基金)
    公式サイトでは、脳卒中後の生活管理と疼痛ケアに関する情報が豊富に揃っています。
  • 日本脳卒中協会
    公式サイトで、日本の患者向けに脳卒中後のリハビリや疼痛管理に関する情報が提供されています。


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