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ハンチントン病に関するエピソード

金子先生(医師)

丸山さん(患者の娘)


金子先生:
「こんにちは、丸山さん。お父様がハンチントン病と診断されたとのことで、不安な気持ちだと思います。今日は、ハンチントン病とパーキンソン病の違いを中心に、詳しくご説明しますね。」

丸山さん:
「はい、ありがとうございます。実は、以前ネットで父の症状について調べていた時にパーキンソン病なのかもしれないと思ったことがあったのですが、実際の診断はハンチントン病で、正直違いがよくわからなくて……。」

金子先生:
「そのお気持ち、よくわかります。両方とも運動機能に影響を与える病気ですから、混乱するのは無理もありません。まず、ハンチントン病は遺伝的な要因が主な原因です。具体的には、HTT遺伝子の異常が引き金になり、神経細胞が徐々に壊れていくことで症状が出ます​。一方、パーキンソン病は脳内のドーパミンが減少することで起こる疾患で、家族性のケースもありますが、遺伝が主な要因ではないことが多いです​。」

丸山さん:
「なるほど。遺伝が関係しているかどうかが大きな違いなんですね。じゃあ、症状はどう違うんですか?」

金子先生:
「はい、症状にも違いがあります。パーキンソン病は、動作が遅くなったり、筋肉が固くなったりすることが特徴的です。そして、手が震える『振戦』がよく見られます。これが典型的な症状ですね​。」

丸山さん:
「振戦って、ハンチントン病にはないんですか?」


金子先生
:
「はい、ハンチントン病では振戦はほとんど見られません。その代わり、ハンチントン病の患者さんは、不随意運動、つまり自分の意思とは関係なく体が動いてしまう『舞踏運動』が特徴的です。手足や顔がまるで踊っているかのように動いてしまうんです。」

丸山さん:
「ああ、それならうちの父にも見られます…。その舞踏運動が原因で、パーキンソン病と混同されるんですね。」

金子先生:
「その通りです。ただ、振戦がないことや、発症年齢がハンチントン病は通常30~50歳で、若年性のケースもあることなどが鑑別の手がかりになります。逆に、パーキンソン病は一般的に50歳以上で発症することが多いです​。」

丸山さん:
「年齢の違いもあるんですね。じゃあ、治療法はどうなんですか?似ているところはあるんでしょうか?」

金子先生:
「治療にも違いがあります。パーキンソン病では、レボドパという薬でドーパミンを補充する治療が行われますが、ハンチントン病には効果がありません​。ハンチントン病では、舞踏運動を抑えるために、ドーパミンを減少させる薬、例えばテトラベナジンが使われます​。最近は、遺伝子治療や小分子薬での治療も研究が進んでいて、これからの治療法に期待が高まっていますよ​。」

丸山さん:
「遺伝子治療…未来に向けて希望があるんですね。詳しく教えていただいて、本当に安心しました。」

金子先生:
「どういたしまして。丸山さん、心配なことがあればいつでも相談してくださいね。これからもご家族をサポートするために一緒に考えていきましょう。」

 


 


 

1. はじめに

ハンチントン病、パーキンソン病、チック障害は、いずれも脳や神経系に影響を与える疾患であり、似たような症状を呈することがあります。そのため、時には誤診されることもありますが、各疾患にはそれぞれ特徴があり、正確な診断と治療が非常に重要です。本記事では、これらの疾患について最新の知見を含めながら、分かりやすく解説します。


2. ハンチントン病とは

ハンチントン病は、遺伝的要因によって引き起こされる進行性の神経変性疾患です。これは家族性に遺伝し、運動機能の障害や認知機能の低下、そして精神的な変化を伴います。発症は通常30歳から50歳頃で、徐々に症状が進行していきます。この障害の典型的な症状は、進行性の認知症と“ヒョレア”(ギリシャ語で舞踏病と言われている)と呼ばれる不随意な踊りのような運動の組み合わせです。

ハンチントン病の症状

認知機能の低下

ハンチントン病は、まず認知機能に影響を与えます。例えば、判断力の低下や記憶力の衰え、日常生活での注意力散漫などが初期症状として現れます。また、性格の変化やうつ症状もよく見られます。

不随意運動(舞踏運動)

この病気の特徴的な症状の一つが「舞踏運動」と呼ばれる不随意な体の動きです。これにより、まるで踊っているかのような不規則な運動が起こります。手足や顔が勝手に動くため、患者自身が制御できない状態になります。

発症年齢と遺伝的要因

ハンチントン病は、遺伝子の異常が原因で発症します。具体的には、HTT遺伝子が関与しており、この遺伝子が変異すると、脳内の神経細胞が次第に損傷を受け、症状が進行します。親がハンチントン病を持っている場合、その子供も50%の確率で発症するリスクがあります。

診断と遺伝子検査

現代では、遺伝子検査を通じてハンチントン病の診断が確実に行われます。家族にこの病気の歴史がある場合、早期に検査を受けることで、適切な治療やサポートが可能です。


3. パーキンソン病との混同

ハンチントン病は、時にパーキンソン病と誤診されることがあります。両者は共に運動機能に影響を与えますが、いくつかの違いがあります。

非定型的なハンチントン病とパーキンソン病の類似点

筋強剛と運動の減少

非定型的なハンチントン病では、パーキンソン病と同様に筋肉が硬くなり、動きが鈍くなることがあります。これにより、歩行がぎこちなくなり、日常動作が遅くなります。

振戦の有無

一方、パーキンソン病では、安静時に手足が震える「振戦」が典型的な症状として現れますが、ハンチントン病ではこの症状はほとんど見られません。

発症年齢の違い

また、発症年齢にも大きな違いがあります。パーキンソン病は通常中高年以降に発症しますが、若年性のハンチントン病は20歳未満で発症することもあります。

薬物療法による症状の混乱

レボドパと不随意運動

パーキンソン病の治療薬であるレボドパは、不随意運動(ジスキネジア)を引き起こすことがあります。これがハンチントン病の舞踏運動と似ているため、混同されることがあります。

ドーパミン拮抗薬とパーキンソニズム

一方で、ハンチントン病の治療に使用されるドーパミン拮抗薬やドーパミン枯渇薬(テトラベナジンなど)は、パーキンソニズムと呼ばれるパーキンソン病様の症状を引き起こすことがあります。


4. チック障害

チック障害は、突然かつ繰り返し現れる不随意な動きや音声が特徴です。短時間で終わることが多いですが、症状の種類や強度は個人によって異なります。

チックの定義と種類

単純チック

瞬きや肩をすくめるといった単純な動作が繰り返されるものです。

複雑チック

より複雑な動作や言葉を発するチックも存在します。例えば、特定の言葉を何度も繰り返したり、複数の動きを同時に行うことが含まれます。

トゥレット症候群

症状と特徴

トゥレット症候群は、運動チックと音声チックが複合して長期間続く疾患です。これらの症状はしばしば生活に支障をきたすことがあります。

強迫性障害との関連

トゥレット症候群の患者は、しばしば強迫性障害(OCD)を併発します。何度も手を洗う、ドアを閉めたか確認するなど、強迫的な行動が見られることがあります。

チックとパーキンソン病の鑑別

チックはパーキンソン病の振戦と区別がつきやすいです。チックは一時的で突発的な動作であり、パーキンソン病の持続的な振戦とは異なります。


5. 薬物誘発性パーキンソニズム


ドーパミン系への影響

ドーパミン拮抗薬や枯渇薬は、脳内のドーパミン量に影響を与えるため、パーキンソニズムの症状を引き起こすことがあります。

治療薬と副作用


6. まとめ

ハンチントン病、パーキンソン病、チック障害は、それぞれ異なる神経系疾患ですが、類似した症状があるために時折混同されます。正確な診断を受けることが、効果的な治療を行うための第一歩です。症状に気づいた場合は、早期の診察をお勧めします。


7. 最新の研究と治療法

現在、ハンチントン病に対する遺伝子サイレンシングや、パーキンソン病の幹細胞治療など、さまざまな新しい治療法が研究されています。また、チック障害に対しては認知行動療法(CBT)が効果を示しており、今後の治療法の進展が期待されます。

ハンチントン病の最新の治療と研究

ハンチントン病(HD)は、HTT遺伝子のCAGリピートが原因で発症する遺伝性神経変性疾患です。近年、遺伝子サイレンシング(RNA干渉)やアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を用いた治療が注目されています。これらの技術は、ハンチントンタンパクの異常な生成を抑制することで、病気の進行を遅らせる可能性があると期待されています(​1)。

2024年には、イスラエルのWeizmann研究所が、血液脳関門を通過できる新しい小分子化合物(SPI-24とSPI-77)を発表しました。この化合物は、ハンチントン病の症状を軽減する可能性があり、動物実験では運動機能や感情機能の改善が見られました(2)。​これらの進展は、ハンチントン病の家族にとって希望の光となっています。さらに、FDAが特定の遺伝子治療プログラムにファストトラック指定を付与しており、新たな治療薬の早期承認が期待されています(3)。

パーキンソン病の治療法と進展

パーキンソン病に関しては、ドーパミンを補充するための「レボドパ」が一般的な治療薬として使用されています。しかし、長期間の使用によってジスキネジア(不随意運動)が生じることがあり、これがハンチントン病の舞踏運動と類似しているため、誤診される場合があります​。また、最近の研究では、細胞移植や幹細胞治療が注目されています。これは、ドーパミンを生成する神経細胞を再生させることを目的としています。動物実験の段階ではありますが、ヒトに対する臨床試験も進行中で、将来的に治療の選択肢が増える可能性があります(3)​。

 

チック障害とトゥレット症候群の治療法

チック障害やトゥレット症候群は、運動チックや音声チックが特徴の疾患です。最近の研究では、認知行動療法(CBT)がチックの管理に有効であることが示されています。また、ドーパミン拮抗薬が治療に使用されることがありますが、これらの薬剤はパーキンソニズムを引き起こす可能性があり、パーキンソン病と混同される場合もあります(3)​。

 


8.参考文献・リンク

 (1)International Huntington Association     
 (2)https://www.embopress.org/doi/full/10.1038/s44321-023-00020-y
 (3)https://www.neurores.org/index.php/neurores/article/view/721/701

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脳卒中後の視床痛についてのストーリー


登場人物
・金子先生:脳卒中後のリハビリと疼痛管理の専門医
・丸山さん:脳卒中後に視床痛(CPSP)が心配な患者さん

金子先生と丸山さんが診察室に座っている。丸山さんは少し不安そうな顔をしている。

金子先生:「こんにちは、丸山さん。今日は脳卒中後の痛みについて心配されているとのことですが、どんな痛みが気になりますか?」

丸山さん:「そうなんです。脳卒中の後から、右手や足に不思議な痛みがあるんです。熱く感じたり、針で刺されたような感覚が突然出てきて…。これってよくあることなんでしょうか?」

金子先生:「なるほど。今お話しいただいたような痛みは、脳卒中後に起こる視床痛というものかもしれません。これは医学的には**脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)**とも呼ばれます。」

 

金子先生:「脳卒中が起きた時、脳の特定の部分、特に視床という場所が損傷を受けることがあります。この視床は、体から脳へ感覚を伝える中継地点なんですが、ここがダメージを受けると、脳が正しい痛みの信号を送れなくなるんです。その結果、普通の刺激でも強い痛みや不快な感覚が起こることがあります。」

丸山さん:「なるほど。だから、ただ触れたり、温度が変わっただけで痛みが出てくるんですね。」

金子先生:「そうです。痛みの感じ方も、熱い、冷たい、刺すような痛みといったさまざまな形で現れることがあります。これが視床痛の特徴です。」

丸山さん:「そんな痛みって、どうやって治療すればいいんでしょうか?ずっと続くんですか?」

金子先生:「治療は個人によって異なりますが、まずは三環系抗うつ薬抗てんかん薬を使うことが多いです。これらの薬は、脳の神経伝達を調整して痛みを和らげるのに役立ちます。例えば、アミトリプチリンガバペンチンなどですね。痛みがひどい場合には、オピオイドを使うこともありますが、慎重に考える必要があります。」

丸山さん:「薬以外には何か方法はありますか?」

金子先生:「もちろんです。薬物療法に加えて、理学療法や**経皮的電気神経刺激(TENS)**などの非薬物療法も効果があります。適度な運動やリラクゼーションが痛みを軽減することも多いです。」

金子先生:「視床痛は、身体の痛みだけでなく心理的な影響も大きいんです。長引く痛みが続くと、不安やうつが生じやすくなり、それがさらに痛みを強く感じさせることがあります。ですから、心のケアも重要です。」

丸山さん:「確かに痛みが出るとイライラして、眠れなくなることもありますね…。」

金子先生:「そうですよね。カウンセリング行動療法も、痛みと上手く付き合うために効果的です。また、家族のサポートも大切です。家族と一緒に、無理なくリハビリを進めることで、気持ちの面でも少し楽になると思います。」

金子先生:「丸山さん、まずは軽い運動リラクゼーションを日常に取り入れながら、最初にお話しした薬物療法を試してみましょう。それに加えて、必要に応じて理学療法士ペインクリニックにも連携していきます。CPSPは治療が長期にわたることもありますが、継続的なケアで改善することが期待できます。」

丸山さん:「そうですね。少し安心しました。家族とも相談して、まずは始めてみます。」

金子先生:「ええ、焦らずに一歩一歩進めていきましょう。何か不安なことがあればいつでも相談してくださいね。」

丸山さんは、金子先生の説明を受けて治療とサポートの選択肢について理解を深め、前向きな気持ちで治療に取り組む決心をします。


目次

  1. はじめに
    ・脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)とは
    ・患者への影響と重要性

  2. CPSPの概要と症状

    ・発症率と発症時期
    ・疼痛の特徴と感じ方
    ・灼熱感、凍結感、刺すような痛みなど
    ・感覚異常と日常生活への影響

  3. 原因と病態生理

    ・視床の役割と損傷メカニズム
    ・神経伝達の異常による疼痛発生

  4. 診断とリスク要因

    ・診断の難しさとポイント
    ・他疾患との鑑別
    ・年齢や併存疾患との関連性

  5. 疼痛の誘発・減弱因子

    ・誘発因子:運動、温度刺激、接触、情動
    ・減弱因子:軽負荷運動、温熱・冷却療法、安静

  6. 治療法

    薬物療法
    ・三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)
    ・抗てんかん薬(ラモトリギン、ガバペンチン、プレガバリン)
    ・オピオイドの使用と注意点
    ・非推奨の薬物(NSAIDs、局所麻酔薬など)

    非薬物療法
    ・理学療法・運動療法
    ・マッサージ・鍼灸療法
    ・経皮的電気神経刺激(TENS)
    ・ペインクリニックでの治療

  7. 心理的影響とサポート

    ・不安、うつ病、睡眠障害への対応
    ・行動療法と心理的支援の重要性

  8. 患者と家族へのアドバイス

    ・日常生活での工夫と注意点
    ・リハビリテーションの取り組み方
    ・支援体制の活用

  9. まとめ

    ・CPSPへの総合的な理解と対応策
    ・早期介入と継続的ケアの重要性

  10. 参考となる情報源

    ・推奨される文献やウェブサイト
    ・専門家による最新ガイドライン


1. はじめに  脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)とは?

**脳卒中後中枢性疼痛(CPSP)**は、脳卒中後に起こる神経障害性疼痛の一種で、難治性の慢性疼痛として知られています。脳卒中患者の約8~11%が発症すると推定され、脳卒中から数日後に始まることもあれば、数年後に発症することもあります。この疼痛は、日常生活やリハビリの進行を大きく妨げるため、患者にとって大きな負担となります。

CPSPは、単に身体の痛みだけでなく、心理的苦痛も伴うことが多く、生活の質を著しく低下させる要因です。患者自身はもちろん、周囲の家族にとっても理解とサポートが必要不可欠です。


2. CPSPの概要と症状

CPSPの主な特徴は、脳卒中後に起こる異常な痛みです。患者はしばしば灼熱感凍結感針で刺されるような痛みを感じ、時には骨の芯から疼くような深い痛みを訴えることもあります。また、軽い刺激や接触で激しい痛みが引き起こされることがあり、日常生活に支障をきたします。

痛みの発現は個人差が大きく、持続的な痛みが続く場合もあれば、断続的に現れることもあります。これにより、患者は物理的な苦痛に加え、心理的なストレスや不安、さらにはうつ病などを併発するリスクが高くなります。


3. 原因と病態生理

CPSPは、脳卒中によって損傷を受けた脳の特定部位、特に視床と呼ばれる領域の障害が関与しています。視床は、感覚情報を体のさまざまな部分から受け取り、それを脳の他の部位に伝える役割を担っています。この視床が損傷を受けると、脳が体の痛みや感覚を正しく処理できなくなり、結果としてCPSPのような異常な痛みが生じます。

脳卒中により損傷した神経経路は、通常の感覚情報を誤って解釈し、痛みとして感じさせます。このメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、神経の再編成や伝達物質の変化が関連していると考えられています。


4. 診断とリスク要因

CPSPの診断は、特に発症初期において難しいとされています。なぜなら、脳卒中後の症状は多岐にわたるため、他の後遺症や疾患と痛みを区別することが難しいからです。一般的には、脳卒中後に異常な感覚や痛みが生じた場合、まずはCPSPを疑います。

診断においては、患者の痛みの特徴や経過、感覚異常の有無を確認し、他の原因による疼痛との鑑別が行われます。また、痛みの程度を測るために疼痛評価スケールも使用されます。リスク要因としては、脳卒中の部位や重症度が挙げられますが、年齢や性別は明確なリスク要因とはされていません。


5. 疼痛の誘発・減弱因子

CPSPの疼痛は、さまざまな要因によって引き起こされます。運動温度刺激(特に冷感)接触が痛みを誘発する主な要因として挙げられ、時には情動的なストレスも痛みを悪化させることがあります。軽い触れ合いや温度の変化など、通常では痛みを引き起こさないような刺激でさえ、CPSP患者には強い痛みを伴うことがあります。

一方で、軽い運動温熱療法冷却療法などが痛みの軽減に役立つ場合もあります。痛みが慢性化すると、心理的な要素も影響してくるため、リラクゼーションやストレス管理も重要な対処法となります。


6. 治療法

CPSPの治療には、薬物療法非薬物療法があり、それぞれ患者の症状に応じたアプローチが選択されます。

薬物療法

CPSPにおいては、一般的な鎮痛剤である**非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)**は効果が薄いため、使用は推奨されていません。代わりに、以下の薬物が第一選択肢として使用されます。

非薬物療法

薬物治療に加えて、理学療法リラクゼーションなどの非薬物療法も重要です。


7. 心理的影響とサポート

CPSPは肉体的な痛みだけでなく、心理的な苦痛も伴います。多くの患者が不安うつ病を併発し、これらが痛みをさらに悪化させる悪循環に陥ることがあります。また、痛みによって睡眠障害を引き起こし、心身ともに疲労が蓄積することも少なくありません。

心理サポートの重要性

CPSPの治療においては、身体の治療だけでなく心理的なケアも非常に重要です。特に以下のアプローチが効果的です。


8. 患者と家族へのアドバイス

CPSPは患者だけでなく、その家族介護者にとっても大きな課題です。適切なサポートを提供するためには、CPSPについての理解を深め、日常生活での工夫を取り入れることが重要です。

日常生活での工夫

リハビリテーションの進め方

支援団体やコミュニティの活用


9. まとめ

CPSPは脳卒中後に発症する難治性の疼痛ですが、早期の介入継続的なケアによって症状の改善や生活の質の向上が期待できます。痛みの治療には、薬物療法や非薬物療法が組み合わされ、個々の患者に合わせた治療計画が立てられます。また、痛みだけでなく、心理的なサポートや日常生活での工夫も不可欠です。

CPSPを克服するためには、患者と家族の理解と協力が重要です。日々の生活の中で適切なサポートを提供し、痛みと上手に向き合うことで、患者の生活の質を向上させることが目指されます。


10. 参考となる情報源

診療ガイドライン

患者支援団体やリソース

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脳卒中後の人格変化を気にする方に対するストーリー

 

 


金子先生: 丸山さん、脳卒中を発症してから感じていることを正直に話してください。脳卒中後は特に人格や感情に変化を感じることがある方が多いんですよ。例えば、感情のコントロールが難しくなったり、イライラしやすくなったりします。これは脳の損傷部位によるものが考えられます。

丸山さん: 確かに、最近急に怒りっぽくなったり、悲しくなることが多くなりました。今まではそんなことなかったんですけど、なぜなんでしょうか?

金子先生: それは、おそらく前頭葉が影響を受けているからでしょう。前頭葉は感情のコントロールや社会的な行動を司る部分です。前頭葉の損傷があると、感情を抑えるのが難しくなったり、衝動的な行動を取ってしまったりすることがあります。これは脳卒中後に多く見られることなんです。

丸山さん: そうなんですね。前はもっと落ち着いていたのに、最近はちょっとしたことで感情が爆発しそうになります。どうすれば良いのでしょうか?

金子先生: まず、感情の変化に気づけたことが大きな一歩です。そして、治療やリハビリを通じて、少しずつ改善していけます。特に、心理療法やカウンセリングが役立つことが多いですよ。また、日常生活でリラックスする方法を取り入れることも大切です。瞑想や深呼吸など、感情を落ち着かせる方法も効果がありますよ。

丸山さん: それは助かります。家族にも迷惑をかけているような気がしていて、どう伝えればいいか悩んでいました。

金子先生: 家族とのコミュニケーションも重要です。お互いの気持ちを素直に伝え合うことで、サポートを得やすくなります。サポートグループへの参加も検討してみてください。同じような経験をした方たちとの交流は、とても励みになります。

丸山さんは、金子先生の説明に納得し、今後の治療と家族とのコミュニケーションに前向きに取り組む決意を固めました。

 



目次

  1. はじめに

    ・脳卒中とは
    ・脳卒中が与える影響
    ・パーソナリティ(パーソナリティー)とは何か

  2. 脳卒中後の人格変化の概要

    ・人格変化が起こる思考
    ・個人の変化の頻度と統計データ
    ・最新の研究動向

  3. 脳卒中後に見られる主な人格変化

    ・考え方の変化
    ・感情の変化
    ・動作の変化

  4. 人格の変化の原因となる脳の部位

    ・前頭葉の役割と損傷の影響
    ・小脳の役割と損傷の影響
    ・その他の関連部位

  5. 最新の研究から分かったもの

    • 1. 損傷部位の特異性 
    • 2. 脳卒中の重症度  
    • 3. 認知機能の障害 
    • 4.精神的健康状態
    • 5. 社会的サポートと環境
    • 6. 神経可塑性とリハビリテーション
    • 7. 神経伝達物質の変化
    • 8.二次的な脳損傷と炎症 
    • 9. 併存疾患の影響 
    • 10. 個人の性格特性と遺伝的関与
       

  6. 態度と生活様式の変化が個人に与える影響

    ・日常生活の変化と心理的影響 
    ・周囲の人々への影響と対応策

  7. 脳卒中後の人間変化への対処法

    ・専門家への相談と治療 
    ・リハビリテーションと社会復帰
    ・セルフケアと自己管理

  8. 療法士からのコメント

    ・専門家の視点から見た人の変化 
    ・心の負担を考える方法

  9. まとめ

    ・脳卒中後の人格変化の理解と対応 
    ・今後の展望と研究の方向性

  10. 参考文献

    ・最新の研究論文と専門書籍
    ・信頼できる情報源の紹介




1. はじめに

脳卒中とは

脳卒中は、脳の血管が詰まったり立ち止まったりで、脳の一部に血流が途絶えず、酸素や栄養が先に行けなくなる病気です。これにより、脳細胞が損傷を受け、様々な身体機能や脳卒中は、すぐに適切な治療が行われないと、後遺症が残ることが多い重度の病気

脳卒中が与える影響

脳卒中は身体の動作や感覚に直接的な影響を与えるだけでなく、脳の損傷部位によっては、性格や感情、行動といった「人格」にも大きな影響を与えます。そのため、脳卒中を経験した人は、後遺症の意思として人間に変化が現れる

人格

人格とは、個人の特徴的な『考え方』『感情』『行動』などのパターンを許容します。これは余裕が持てる個性であり、長年の経験や環境の影響によって形成されます。顕在的な側面とは、他者に見える部分、例えば話し方や行動、態度などが含まれます。意識していない部分や無意識に感情や信念などです。

特に脳の特定の部位が損傷されると、思考や感情、行動のパターンが変わることが起こります。これが、かなり『人格変化』です。後に性格が変わったと感じることは、脳の機能が損傷によって変化していることに気づいている場合が多いです。


2. 脳卒中後の人格変化の概要

人格変化

脳卒中後に見られる人格変化は、損傷を受けた脳の部位に大きく依存します。 脳の特定の領域が損傷を受けると、その領域が担っている機能が低下したり、変質したりすることで例えば、前頭葉が損傷した場合、感情の抑制が暴言となり、突発的な怒りや衝動的な行動が増えることが知られています。

個人の変化の頻度と統計データ

最新の研究によると、脳卒中を経験した人の中で約30%~50%の人々に少数人格変化が見られると言われています。また、人間の変化は時間の経過とともに徐々に顕在化する場合もあり、早期発見と適切なケアが求められます【参考: Robinson RG, Starkstein SE, 「脳卒中後の感情障害に関する現在の研究」】

最新の研究の動向

今年、脳卒中後の人格変化についての研究はさらに発展し、脳の特定部位の損傷がどのように個々の感情や行動に影響を与えるのかを詳細に解析する技術が進歩しています。fMRIを用いた脳の画像解析は、脳卒中後の患者に見られる具体的な変化を追跡し、治療法発展に向けて検討しています。また、神経可塑性(脳が損傷を補うために機能を再編成する能力)を活用したリハビリテーションが注目されており、脳卒中後の人格変化への対処に効果を見せています。【参考: Hackett ML、Pickles K、「パート I: 脳卒中後のうつ病の頻度: 最新版」観察研究の系統的レビューとメタ分析」】


3. 脳卒中後に見られる主な人格変化

考え方の変化

脳卒中の後遺症の一つに「思考力」や「論理性」の低下が挙げられます。 脳卒中によって認知機能が影響を受けると、記憶力や集中力が低下し、論理的に考えることが難しくなります。また、前は冷静で忍耐強かった人が、脳卒中後には感情的になり、どうしても焦りやすいこともあります。 これは、特に前頭葉や側頭葉が損傷を受け場合に生じます。

感情の変化

脳卒中後の感情の変化は非常に多様です。 特に、うつ病や不安症が脳卒中に後遺症として発症することはよく知られていますが、これは脳内の重要な感情制御領域が損傷を受けたりするために起こります。 損傷部位によっては症状が軽減し、前向きな性格に変化する場合もあります。その他、 前頭葉が損傷を受けた場合、感情の起伏が激しくなり、これまで経験しなかった感情的な爆発が突然起こることもあります。

動作の変化

脳卒中による運動機能の低下は、行動パターンにも大きな変化をもたらします。例えば、脳卒中前は活動的で社交的だった人が、身体的な緊張から引きこもりがちになり、外部との交流を遮断することがあります。また、前頭葉の損傷によって衝動的な行動が増え、以前は行われていなかったリスクのある行動をとることも見られます。 その他本人の心理的なストレスや環境的な関与も影響しています【参考: Cumming TB et al., “Cognitive deficiles after speech: Impact on Recovery andリハビリテーション”]



4. 人間変化の原因となる脳の部位

脳卒中後の人格変化は、損傷を受けた脳の部位に密接に関係しています。 脳の中でも、特に感情や意思決定をつかさどる領域が損傷した場合、人格の変化が顕在化します。ここでは、脳卒中後に人格の変化を踏まえて主要な脳の部位について解説します。

前頭葉の役割と損傷の影響

前頭葉は、感情のコントロール、意思決定、計画、社会的行動の調整を司る重要な部分です。この部位がダメージを受けると、感情の制御が困難になり、突発的な怒りや、衝動的な行動また、前頭葉は正しい判断を行う事にも関わっており、その部位の損傷によって社会的行動に問題がみられることもあります。 具体的に研究では、前頭葉を損傷した患者は、感情のコントロールが著しく低下し、攻撃的になったり、凄まじく無気力になるケースが報告されています。【参考: Starkstein SE、Robinson RG、「脳障害後の脱抑制のメカニズム」】

小脳の役割と損傷の影響

小脳は主に運動の協調性を管理している部分ですが、最近の研究では、感情や行動にも注目していることがわかっています。感情の不安定さや認知機能の低下が見られることがあります。 これは、小脳が脳の他の領域と複雑に相互作用しているためです。 小脳の損傷を受けた患者は、感情的に不安定になり、以前にはなかった感情の爆発やうつ症状が現れることがあります【参考: Schmahmann JD、「認知と感情における小脳の役割:1982 年以来の思考測定障害仮説に関する個人的な考察と、理論から治療までの歴史的進化」】。

その他の関連部位

脳卒中の損傷が側頭葉に及ぶと、記憶や言語機能が低下し、これに伴ってコミュニケーションの困難が生じます。これにより、社会的な交流が減少し、孤独感や抑うつが進みます。また側坐核などの脳深部にある構造が損傷を受けると、動機づけの低下や、関心が大幅に低下する症状が見られます。このように、損傷の程度や場所により現れる症状が異なってきます。【参考: Turner GR、Spreng RN、「脳損傷後の実行機能と神経可塑性」】


5. 最新の研究から分かったもの

脳卒中の後の人格変化に関しては、脳の損傷部位だけでなく、他のさまざまな懸念も影響を与えます。最新の研究に基づいて、人格変化に関与するいくつかの懸念を詳しく説明します。

1. 損傷部位の特異性

脳卒中により部位を損傷したかによって、症状出現や人格変化が異なります。 同様に、前頭葉や小脳の損傷は感情や行動に影響を及ぼしますが、側頭葉や視床、基底核など被害を受けた場合も、記憶障害や情緒不安定といった症状が見られます。

日常生活での観察ポイント:

2. 脳卒中の重症度

脳卒中の規模や重症度によって、人格の変化の程度も異なります。大規模な脳卒中では、広範囲に脳の損傷が見られ、記憶や注意力、感情制御の能力が著しく低下することがあります。軽度の脳卒中の場合、症状は比較的軽微であり、人格変化も限定的であることが多いです。

日常生活での観察ポイント:

3. 認知機能の障害

脳卒中後には、注意力や記憶力、実行機能(計画や判断など)に障害が起こることがあります。これらの認知機能の低下は、日常生活での行動や他者とのコミュニケーションに大きな影響を与え、結果として「性格が変わった」と感じられることがあります。リハビリテーション、これらの機能を回復させることが重要です。

日常生活での観察ポイント:

4. 精神的健康状態

うつ病・不安症の影響

脳卒中後、うつ病や不安症が発生することがよくあります。これらの症状は、気分の落ち込み、エネルギーの低下、不安や心配の増加などが見られ、日常生活や回復の真剣に影響を考慮することあります。

日常生活での観察ポイント:

5. 社会的サポートと環境

サポート体制の重要性

家族や友人からの支援は、脳卒中後の回復に関して非常に重要です。社会的サポートが豊富だと、患者の心理的安定やリハビリへの葛藤が軽減します。反対にサポートが不十分だと、孤独感を感じたり憂鬱になったりする可能性があります。

日常生活での観察ポイント:

6. 神経可塑性とリハビリテーション
脳の再構築能力と回復
神経可塑性とは、脳が損傷された部分を補うために新しい神経回路を作り直す能力のことです。リハビリテーションは、この可塑性を活用し、機能回復を考えます。特に初期のリハビリが効果的です。

リハビリの効果と最新アプローチ
最新のリハビリ技術では、運動療法や作業療法に加えて、認知機能の訓練も行われ、脳卒中後の機能回復が促進されます。

7. 神経伝達物質の変化
セロトニンやドーパミンの役割
脳卒中後、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質のバランスが乱れることがあります。これが、気分の興奮や落ち込み、モチベーションの低下につながります。

感情制御と気分変動
神経伝達物質の変化により、感情のコントロールがおかしくなったり、気分の変動が起こったりすることがあります。気分の変動が激しい場合は、医師の診察が必要です。

8.二次的な脳損傷と炎症 
炎症反応と追加損傷のリスク
脳卒中後、脳内の炎症が長くなる可能性があります。この二次的な損傷は、回復が遅れる可能性があります。

認知機能と感情への影響
炎症が続くと、認知機能(記憶、注意、判断力)が低下し、感情の起伏があったり、不安定になったりすることがあります。

9. 併存疾患の影響 
糖尿病・高血圧などの影響
脳卒中後、糖尿病や高血圧などの併存疾患は回復に大きな影響を与えます。これらの疾患があると、脳卒中再発リスクが心配、リハビリが解決する可能性があります

合併症と回復への影響
合併症がある場合、身体機能や認知機能の回復が遅れたり、予後が悪化する場合があります。適切な管理と治療が必要です。

10. 個人の性格特性と遺伝的関与
遺伝的背景とストレス耐性
個人の性格や遺伝的背景は、卒脳中の後の個人の変化に影響を与える可能性がある。ストレス耐性が高い人は、困難な状況でもより適応しやすい傾向がある。

適応力と回復力
回復過程では、性格的な強さや環境への適応力が重要です。 ストレスに対する適応力が高いと、脳卒中後のリハビリに対しても積極的に取り組み、回復が早く進む可能性がある。


6. 態度と生活様式の変化が人間に与える影響

脳卒中は、日常生活のあらゆる面に影響を与えます。役割の喪失が、心理ストレスや自己評価の低下につながり、それがさらに人間的な影響を考えます。 以前は当たり前にできていたことができなくなると、自信を失ったり、無力感を感じられるようになることがあります。これが人格変化につながることもあります。

周囲のサポートや適切なリハビリテーションを受けることで、これらの影響を考えることができ、前向きに生活を再構築するお手伝いになります。

日常生活の変化と心理的影響

脳卒中になると、食事や家事、身の回りの世話など、日常の基本的な活動に対して多大な労力を必要とするようになります。また、以前は簡単にできていたことができなくなることで、無力感や自己有効感の喪失が起こる、これが人格変化につながることもあります。

周囲の人々への影響と対応策

脳卒中後の人格の変化は、本人だけでなく周囲の家族や友人にも影響を与えます。以前とは異なる行動や感情の表れに対して、不安やストレスを感じることもあります。対応するためには、専門家からのアドバイスやサポートを受けることが大切です。また、オープン(率直)なコミュニケーションを心がけ、本人が感じている不安や困難を冷静に、寄り添うことが重要です

7. 脳卒中後の人格変化への対処法

脳卒中の後の人格変化に対応するためには、医療専門家支援だけでなく、本人や家族が考慮すべき具体的なアプローチが重要です。

専門家への相談と治療

人格の変化が見られた場合、まずは脳卒中リハビリの専門家や精神科医に相談することが重要です。感情の不安定さや行動の変化が見られる場合、心理療法やカウンセリングが有効なことがあります。認知行動療法(CBT)や心理教育は、患者とその家族が変化に適応することを助ける方法としてよく使われます。また、うつ病や不安症が見られる場合は、抗うつ薬や抗不安薬などの薬物療法が効果的です[参考: Hackett ML、Yapa C、「脳卒中後のうつ病の系統的レビュー: 介入の将来の方向性」]。

リハビリテーションと社会復帰

脳卒中後のリハビリテーションは、身体機能だけでなく、認知機能や感情の安定化にも役立ちます。 特に、作業療法や認知リハビリテーションが人格変化の改善に役立ちます。さらに、日常生活への復帰を目指した就労支援や社会参加の機会を増やすことも、心理的な安定や自己評価の向上に繋がります

セルフケアと自己管理

脳卒中後の人間変化に対して、本人が現われるセルフケアも非常に重要です。 ストレス管理やリラクゼーション技法(瞑想や深呼吸など)を実践することで、感情のコントロールがうまくなることがあります。健康的な生活習慣を維持すること(バランスの取れた食事、十分な睡眠、定期的な運動)は、脳機能の回復に役立ち、精神的にも安定した状態を保つことに効果的です。


8. 療法士からのコメント

脳卒中後の人格変化に対しては、療法士やカウンセラーが重要な役割を果たします。ここでは、療法士の視点から、脳卒中の後の変化に対する一般的なアドバイスを紹介します。

専門家の視点から見た人の変化

療法士は、脳卒中後の様々な変化について、患者や家族に対する適切なサポートを提供します。これらの変化に対しては、患者自身の気持ちを把握し、焦らずに少しずつ改善に向けた取り組みを進めることが推奨されます。 療法士は、脳卒中後のリハビリテーションだけでなく、心理的なサポートや生活改善のアドバイスも行い、患者と家族が新しい生活に適応できるように支援します。

心の負担

脳卒中後に人格変化を経験すると、患者本人はもちろん、周囲の人々の心理的な負担がかかります。そのため、少し負担も軽減するための方法として、以下のような取り組みが有効です:


9. まとめ

脳卒中後の人格変化の理解と対応

脳卒中後の人間の変化は、損傷を受けた脳の部位や重症により多様であり、感情のコントロールが狂ったり、行動が大きく変わることが起こります。このような変化を把握し、早期に発見するそれで、適切な対策をとることが可能です。家族や友人が変化を、定期サポートを提供することができ、本人の回復に大きな影響を与えます。

今後の展望と研究の方向性

今後、脳卒中後の人格変化に関する研究はさらなる進歩し、より効果的な治療法やリハビリテーションが開発されることが期待されています。また、社会的な支援システムも、患者の生活の質を向上させるために重要な要素になります。脳卒中を乗り越えた後の人生をサポートする環境がやがて進んでいくと考えられます。


10. 参考

 

 

 

 

 

 

 

本内容は医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」に基づいています。

 

1. はじめに

1.1 パーキンソン病とは

パーキンソン病は、脳内でドーパミンを産生する神経細胞が減少することで起こる神経変性疾患です。ドーパミンは運動や気分の調整に関わる重要な物質であり、その不足により、身体の震え、筋肉のこわばり、動きが遅くなるといった症状が現れます。パーキンソン病は高齢者に多くみられますが、若年で発症するケースもあり、原因やリスク要因についての研究が進められています。

1.2 本記事の目的

この記事では、パーキンソン病にかかりやすい人の特徴について、最新の研究をもとに解説します。遺伝的要因や環境的要因について考察し、誰がパーキンソン病になりやすいのかを探っていきます。

2. パーキンソン病の概要

2.1 症状と進行

パーキンソン病の主な症状には、手足の震え(振戦)、筋肉のこわばり(筋強剛)、動作の緩慢さ(無動・寡動)、姿勢の不安定さなどがあります。これらの症状は徐々に進行し、日常生活に支障をきたすようになります。また、患者の中には認知機能の低下や睡眠障害、便秘などの非運動症状もみられることがあります。個々の症状や進行の速さは人によって異なり、正確な診断と適切な治療が必要です。

2.2 患者数と統計データ

日本では、パーキンソン病は最も一般的な神経変性疾患のひとつで、50歳以上の100人に1人が罹患していると言われています。世界的には、650万人以上がパーキンソン病を患っていると推定されており、その数は高齢化の進行とともに増加傾向にあります。しかし、なぜある人はパーキンソン病を発症し、他の人は発症しないのかについては、まだ十分に解明されていません。

3. パーキンソン病になりやすい人の特徴

パーキンソン病の発症には、遺伝的要因と環境的要因が関与していると考えられています。ここでは、それぞれの要因について詳しく説明します。

3.1 遺伝的要因

3.1.1 家族歴と遺伝子変異

パーキンソン病には、家族性パーキンソン病と呼ばれる遺伝性のケースが存在します。家族歴がある場合、特定の遺伝子変異(SNCA、LRRK2、PARK2 など)が関連している可能性が指摘されています。しかし、多くの患者はこれらの遺伝子変異を持っていないため、遺伝だけで発症リスクを説明することはできません。近年の研究では、遺伝子と環境の相互作用が重要な役割を果たす可能性が示唆されています。

3.1.2 遺伝子研究の最新動向

ヒトゲノムの研究が進むにつれ、パーキンソン病に関連する複数の遺伝子が発見されてきました。特に、ドーパミンの代謝や神経細胞の生存に関わる遺伝子の変異が注目されています。最近の研究では、パーキンソン病のリスクを高める遺伝子の組み合わせや、その発症メカニズムに関する新たな知見が報告されています。しかし、これらの遺伝子変異が必ずしも発症につながるわけではなく、他の要因との組み合わせが重要です。

3.2 環境的要因

3.2.1 農薬・除草剤への曝露

パーキンソン病と環境因子の関連を調べた研究によれば、農薬や除草剤への曝露が発症リスクを高める可能性があるとされています。農業に従事する人々や、農薬に頻繁に触れる環境で生活している人々の間で、パーキンソン病の発症率が高いというデータがあります。しかし、この因果関係については、さらなる研究が必要とされています。

3.2.2 毒素や溶剤の影響

特定の化学物質や溶剤への曝露もパーキンソン病のリスクに関連する可能性があります。例えば、トリクロロエチレン(TCE)やペルクロロエチレン(PCE)などの有機溶剤は、神経細胞に有害な影響を及ぼすことが示されています。これらの化学物質に長期間曝露されることで、脳内のドーパミン産生細胞がダメージを受け、パーキンソン病の発症リスクが増すと考えられます。

3.2.3 生活習慣(喫煙、カフェイン摂取、尿酸値など)

興味深いことに、喫煙者は非喫煙者に比べてパーキンソン病の発症リスクが低いという研究結果が報告されています。また、カフェインの摂取もリスク低下に関連している可能性があるとされています。一方で、血中の尿酸値が高いと、パーキンソン病の進行が遅くなるという研究もあります。これらの生活習慣因子についてのメカニズムはまだ明確ではありませんが、予防や治療の手がかりになるかもしれません。

3.3 その他のリスク要因

3.3.1 年齢と性別

パーキンソン病は特に中高年以降に発症することが多く、年齢はリスク要因のひとつです。また、男性のほうが女性よりも発症リスクが高いとされています。この性差の理由については、ホルモンの影響や生活習慣の違いなど、さまざまな要因が考えられています。

3.3.2 地理的要因

一部の研究では、特定の地域におけるパーキンソン病の発症率の違いが報告されています。例えば、農村部や特定の気候帯に住む人々の間で、発症リスクが高いとされるケースもあります。この背景には、環境中の化学物質への曝露や食生活の違いなどが影響していると考えられます。

性格について

従来の性格とパーキンソン病の発症には、関連性があるという研究がいくつか報告されています。これらの研究では、パーキンソン病を発症する前の「発症前性格」が存在する可能性について議論されています。

1. 内向性・抑うつ傾向: 一部の研究では、パーキンソン病患者は発症前に内向的で、抑うつ傾向が強いことが示されています。また、リスク回避的で計画的な性格を持つ傾向があることも報告されています。これらの特徴は、パーキンソン病発症前の性格と関連している可能性が指摘されています。

2. ドーパミンと性格: パーキンソン病は、脳内のドーパミン神経系の変化と関連しているため、性格の変化や特性に影響を与える可能性があります。例えば、ドーパミンの不足は、活動性や社交性の低下、興味の喪失などに関連することが知られています。これらの性格特性が長期的に影響し、パーキンソン病の発症に関連しているかもしれません。

3. 科学的見解: しかしながら、性格とパーキンソン病の直接的な因果関係を明確にするためには、さらなる研究が必要です。現在の研究では、特定の性格特性がパーキンソン病のリスクを高めるのか、それともパーキンソン病の初期段階で性格変化が起こるのかを断定することは難しいとされています。

4. 遺伝的要因と環境的要因の相互作用

パーキンソン病の発症には、遺伝的要因と環境的要因の組み合わせが重要であると考えられています。単独の要因だけでなく、両者がどのように相互作用するかを理解することが、発症リスクの予測や効果的な予防策の開発に役立ちます。

4.1 遺伝子と環境の組み合わせによるリスク

パーキンソン病のリスクは、遺伝的な素因を持っているかどうかに加え、どのような環境に曝露されるかによって変わります。例えば、特定の遺伝子変異を持っている人でも、毒素などの環境的トリガーに曝露しなければ発症しない可能性があります。逆に、遺伝的リスクが低い場合でも、強い環境ストレスにさらされることで発症リスクが高まるケースがあります。

4.2 個人差と症状の多様性

パーキンソン病の症状や進行度は患者ごとに大きく異なります。これは、遺伝子と環境の組み合わせが一人ひとり異なるためです。例えば、遺伝的要因Aと環境要因Aを持つ人が重い症状を呈する一方で、遺伝的に保護的な要因を持つ人は、同じ環境要因に曝露しても軽い症状にとどまることがあります。このような多様性は、治療法の開発や個別化医療の重要性を示しています。

最近の研究では、特定の遺伝子が環境ストレスへの感受性に影響を与える可能性が示唆されています。例えば、ミトコンドリアの機能に関連する遺伝子変異を持つ人は、毒素に対する脳細胞の耐性が低く、パーキンソン病の発症リスクが高まるとされています。このような研究から、遺伝子と環境の相互作用を理解することで、新たな治療法の開発が期待されています。

5. パーキンソン病の発症メカニズム

パーキンソン病の発症メカニズムは完全には解明されていませんが、神経細胞の異常な変化が主要な原因とされています。ここでは、主なメカニズムについて説明します。

5.1 神経変性とドーパミンの減少

パーキンソン病では、脳の中脳黒質と呼ばれる部分にある神経細胞が変性し、死滅します。これらの細胞はドーパミンを産生しており、運動の調整や感情の制御に重要な役割を果たしています。ドーパミンの減少により、手足の震えや筋肉のこわばり、動作の遅れといった症状が現れます。

なぜ黒質の神経細胞が変性するのかについては、まだ明確ではありませんが、遺伝的要因や環境的要因が関与していると考えられます。また、最近の研究では、細胞内のたんぱく質の異常蓄積が神経細胞の変性に関与している可能性が示されています。

5.2 α-シヌクレインの蓄積

パーキンソン病患者の脳では、α-シヌクレインと呼ばれるたんぱく質が異常に蓄積することが知られています。このたんぱく質が凝集し、細胞内にレヴィ小体という構造を形成することが、神経細胞の機能障害や死滅を引き起こすと考えられています。α-シヌクレインの蓄積は、パーキンソン病の特異的な病理所見であり、発症メカニズムの一端を解明する手がかりとなっています。

5.3 ミトコンドリア機能障害

神経細胞のエネルギー産生に関わるミトコンドリアの機能障害も、パーキンソン病の発症に関連しているとされています。ミトコンドリアは細胞内のエネルギー工場であり、その機能が低下すると、神経細胞はストレスに耐えられず、死滅しやすくなります。環境毒素や遺伝子変異がミトコンドリア機能に悪影響を与えることで、パーキンソン病のリスクが増すと考えられています。

6. 最新の研究と治療法

パーキンソン病の治療には、症状を緩和し、生活の質を向上させることを目的とした薬物療法やリハビリテーションが主に用いられています。しかし、根本的な治療法はまだ確立されておらず、最新の研究が続けられています。

6.1 遺伝子治療の進展

近年、遺伝子治療がパーキンソン病の新たな治療法として注目を集めています。特定の遺伝子の変異が病気の進行に関与していることから、遺伝子編集技術を用いて異常な遺伝子を修正する試みが行われています。現在は主に動物モデルでの研究段階ですが、将来的には人への臨床応用が期待されています。

6.2 新薬の開発状況

ドーパミン補充療法は、パーキンソン病の主要な治療法として広く用いられていますが、長期使用に伴う副作用や効果の減少が課題となっています。これに対し、ドーパミン以外の神経伝達物質に作用する薬や、神経細胞の変性を遅らせる新薬の開発が進められています。例えば、α-シヌクレインの蓄積を抑制する薬剤や、ミトコンドリア機能を改善する薬剤などが研究されています。

6.3 再生医療と幹細胞研究

再生医療は、パーキンソン病の根治を目指す分野として注目されています。特に、神経幹細胞を利用してドーパミン産生細胞を再生させる試みが行われています。すでに動物モデルでの研究が進められており、ヒトへの臨床試験も一部で開始されています。これにより、失われた神経細胞の機能を取り戻すことが期待されています。

 

7. パーキンソン病の予防と早期発見

パーキンソン病は現時点で根治する方法がないため、予防や早期発見が非常に重要です。症状の進行を抑え、生活の質を維持するためには、リスク要因の管理と定期的な健康チェックが不可欠です。

7.1 リスク要因の管理

パーキンソン病の予防には、環境的要因と生活習慣の改善が考えられます。例えば、農薬や化学物質への曝露を最小限にすること、適度な運動を取り入れることが推奨されています。運動は、脳の神経細胞の健康を維持し、ドーパミンの産生を促進すると考えられています。さらに、コーヒーの摂取や喫煙がリスクの低下に関連するという研究結果もありますが、喫煙は他の健康リスクを増大させるため、予防策として推奨されるものではありません。

また、食事面では抗酸化物質を豊富に含む野菜や果物の摂取が、神経細胞のダメージを軽減する可能性があると考えられています。特に、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化物質が脳の健康に寄与する可能性が示唆されています。

7.2 早期診断の重要性

パーキンソン病は、早期に発見することで治療の選択肢が広がり、症状の進行を遅らせることができます。初期症状としては、手足の震えや動作の鈍さ、筋肉のこわばりなどが挙げられますが、便秘や嗅覚の低下などの非運動症状も初期段階で現れることがあります。これらの症状に気づいたら、早めに医師の診察を受けることが重要です。

診断には、神経学的な評価に加えて、脳の画像診断(MRIやSPECTなど)や、ドーパミントランスポーターの検査(DaTスキャン)などが用いられます。これらの検査を用いることで、他の神経疾患と区別し、より正確な診断を行うことが可能です。

7.3 生活習慣の見直し

生活習慣の改善は、パーキンソン病の予防や症状の進行を遅らせるために効果的です。具体的には、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスの管理などが推奨されます。特に、リズム運動(ウォーキング、ダンス、太極拳など)は、ドーパミンの分泌を促進し、神経機能を保つ効果があるとされています。また、社会的な活動を積極的に行うことで、脳の活性化にもつながります。

8. まとめ

パーキンソン病は、遺伝的要因と環境的要因が組み合わさって発症する複雑な神経変性疾患です。発症のメカニズムについてはまだ完全には解明されていませんが、近年の研究により多くの知見が蓄積されてきています。

治療に関しては、薬物療法やリハビリテーション、外科的治療などが行われていますが、根本的な治療法は確立されていません。そのため、予防と早期発見の重要性が高まっています。生活習慣の改善やリスク要因の管理、定期的な健康チェックを通じて、パーキンソン病のリスクを減らし、早期の対策が可能です。

パーキンソン病の患者さんやその家族にとっては、適切な情報提供とサポートが不可欠です。医療専門家や研究者が一丸となり、発症メカニズムの解明や新たな治療法の開発に取り組むことで、今後、パーキンソン病の予防や治療に関する新たな希望が生まれることが期待されます。

9. 参考文献・情報源

9.1 信頼できる情報の入手先

  1. 日本パーキンソン病協会

    • ウェブサイト: https://www.japanparkinson.com/
    • 日本パーキンソン病協会は患者と家族への支援を行い、最新の治療情報を提供しています。
  2. 日本神経学会

    • ウェブサイト: https://www.neurology-jp.org/
    • パーキンソン病の診療ガイドラインや最新の研究論文へのアクセスが可能です。
  3. 世界パーキンソン病デー

    • 日本での活動情報: [パーキンソン病啓発のイベント紹介ページ(各年により異なる)]
    • 世界的な活動については、パーキンソン病の各種団体や国際的な財団のサイトを参考にしてください。
  4. 国際パーキンソン病基金(Parkinson’s Foundation)

    • ウェブサイト: https://www.parkinson.org/
    • パーキンソン病の症状や治療法、研究に関する詳細情報を提供しています。

9.2 専門機関と団体

  1. アメリカ国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)

    • ウェブサイト: https://www.ninds.nih.gov/
    • パーキンソン病に関する最新の研究、臨床試験情報を提供しています。
  2. マイケル・J・フォックス財団(The Michael J. Fox Foundation for Parkinson’s Research)

    • ウェブサイト: https://www.michaeljfox.org/
    • パーキンソン病の研究を支援し、最新の治療法開発に取り組んでいます。症状管理や治療オプションについても豊富な情報を提供しています。

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パーキンソン病になりやすい人の特徴に対するストーリー

ある診察室で、医師の金子先生とパーキンソン病の患者である丸山さんが対面していた。丸山さんは、パーキンソン病と性格や遺伝の関係について心配そうな顔をしていた。



性格に関するストーリー

金子先生: 「丸山さん、最近の体調はいかがですか?」

丸山さん: 「実は、ここ数年、手の震えや動作がぎこちなくなってきている気がします。なんだか、体も前より動かしにくいんです。」

金子先生: 「それは心配ですね。少しお話を伺ってもいいですか?丸山さん、ご自身の性格について少しお聞きしたいのですが、昔から内向的であったり、慎重な性格だと思いますか?」

丸山さん: 「そうですね、確かに新しいことに挑戦するのはあまり好きじゃないですし、リスクを取ることはあまりしない性格です。若い頃から、どちらかというと計画的で、慎重なほうだと思います。」

金子先生: 「そうですか。それは興味深いですね。実は、パーキンソン病の発症前に、今お話しされたような性格特性を持っている方が多いという研究があるんです。特に内向的で、リスクを避ける傾向が強い方は、パーキンソン病のリスクが高い可能性が指摘されています。」

丸山さん: 「ええっ、性格とパーキンソン病に関係があるんですか?」

金子先生: 「はい、ただこれはあくまで関連性であって、直接の原因ではありません。脳の中にはドーパミンという物質があって、それが運動や感情、意欲に影響を与えます。パーキンソン病では、このドーパミンを産生する神経細胞が減少するため、動作のぎこちなさや手の震えが生じます。同時に、ドーパミンの減少は性格にも影響を与えると考えられています。ドーパミンが不足すると、新しいことへの興味が減ったり、不安を感じやすくなったりするんです。」

丸山さん: 「なるほど。では、私が慎重な性格だったのは、パーキンソン病の初期症状だったのでしょうか?」

金子先生: 「それはまだはっきりと分かっていません。性格とパーキンソン病の関係については、様々な研究が進行中です。一部の研究では、性格特性がパーキンソン病の発症リスクを高める可能性があるとされていますが、逆にパーキンソン病の初期段階で性格に変化が現れるという意見もあります。」

丸山さん: 「そうなんですね。私が気をつけるべきことはありますか?」

金子先生: 「はい。性格特性に気を配ることはもちろん大事ですが、日常生活の中で運動習慣を維持することや、心の健康に気をつけることも非常に重要です。また、パーキンソン病に関連する初期症状が見られた場合、早めに専門医に相談することが大切です。こうした対策によって、進行を遅らせたり、症状を緩和することができるかもしれません。」

丸山さん: 「わかりました。まずは、運動と心のケアに取り組んでみます。」

遺伝に関するストーリー


丸山さん: 「先生、パーキンソン病は遺伝するって聞いたんですけど、私の子供や孫に影響が出るんじゃないかと心配で…。」

金子先生: 「なるほど。ご心配なのはよくわかります。では、まずパーキンソン病と遺伝の関係についてわかりやすくお話ししましょうね。」

金子先生は、丸山さんが理解しやすいように、机に紙とペンを取り出し、簡単な図を書き始めた

金子先生: 「確かに、一部のパーキンソン病は遺伝によるものがあります。これは**『家族性パーキンソン病』と呼ばれ、特定の遺伝子変異**が関連しています。しかし、この家族性のパーキンソン病は、全体の患者さんのうち、10%以下と言われているんです。」

丸山さん: 「そうなんですね。じゃあ、ほとんどのパーキンソン病は遺伝じゃないんですか?」

金子先生: 「その通りです。ほとんどのパーキンソン病は、**『孤発性パーキンソン病』**と呼ばれていて、遺伝子だけでなく、環境や生活習慣など、さまざまな要因が組み合わさって発症すると考えられています。ですから、遺伝だけで発症するわけではないんです。」


金子先生は、さらに図を使って説明を続けた。
環境的要因と遺伝的要因が重なり合って、発症リスクが高まる可能性があることを示した。

金子先生: 「例えば、特定の遺伝的素因があったとしても、環境の要因、例えば農薬や化学物質への曝露が引き金になることがあります。一方で、遺伝的なリスクが低い方でも、強い環境ストレスがあると発症しやすくなることもあるんですよ。」

丸山さん: 「なるほど…じゃあ、私の子供たちも遺伝的にリスクがあるかもしれないってことですか?」

金子先生: 「そうですね。遺伝子の影響が全くないとは言えません。ただ、先ほどもお話ししたように、家族性パーキンソン病の割合は非常に少ないです。遺伝子に素因があったとしても、必ずしも発症するわけではありませんし、生活習慣や環境によってリスクを下げることもできます。」

丸山さん: 「それを聞いて少し安心しました。でも、何か子供たちにできる予防法はありますか?」


金子先生: 「良い質問ですね。予防には、バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレス管理が重要です。また、喫煙や農薬の過剰な使用を避けるなど、生活習慣を見直すことがリスクを減らす助けになります。特に運動は、脳の健康を保ち、パーキンソン病のリスクを下げると言われています。リズム運動、例えばウォーキングやダンスはおすすめですよ。」

丸山さん: 「わかりました。じゃあ、子供たちにもそう伝えてみます。先生、ありがとうございます。

金子先生: 「どういたしまして。心配なことがあればいつでも相談してくださいね。パーキンソン病は遺伝だけでなく、いろいろな要因が絡み合っているので、私たちと一緒に少しずつリスクを減らす方法を考えていきましょう。」


丸山さんはほっとした表情で、金子先生の話に耳を傾け、少し前向きな気持ちになったようだった。

 

退院後のリハビリは STROKE LABへ

当施設は脳神経疾患や整形外科疾患に対するスペシャリストが皆様のお悩みを解決します。詳しくはHPメニューをご参照ください。

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目次

 

1.膝関節の役割を理解する

2.家族でできる可動域練習

3.膝関節屈曲可動域テスト

4.膝関節伸展可動域テスト

 

 

膝関節の役割を理解する

膝関節の構造

膝関節は螺旋関節分類されていて大腿骨、膝蓋骨そして脛骨の3つの骨で構成されています。他の教科書では蝶番関節や顆状関節と書かれているものもありますが、今回は国家試験的に正しい螺旋関節として説明していきたいと思います。

 

螺旋関節と蝶番関節は似たような形をしていますが、蝶番関節と螺旋関節の大きな違いは言うのは軸の取りにあります。

蝶番関節の軸はまっすぐなのに対して、螺旋関節は斜めになっています。純粋な膝関節の屈伸運動だけではなく少し軸が偏った回旋運動が入るのが螺旋関節となります。ですので、膝関節の運動は屈曲、伸展だけではなく軽度の外旋運動を伴うとされています。

この膝の回旋運動をスクリュー・ホーム・ムーブメントと言います。

 

スクリュー・ホーム・ムーブメントとは

スクリュー・ホーム・ムーブメントとは何かと言うと、足を浮かせ膝が曲がった状態から伸ばしていくときに最終伸展域の少し手前(10°位手前)のところで下腿が外旋方向に動くことを言います。蝶番関節と違って螺旋関節ですので最終伸展領域に入って外旋が起こります。

 

このスクリュー・ホーム・ムーブメントはOKC(オープン・キネティック・チェーン)の状態の時だけ起こります。OKCとは足が地面から離れて固定されておらず、自由に動くことができる運動のことです。

 

私たちが地面に膝を伸ばし立っている状態のCKC(クローズ・キネティック・チェーン)では、足が地面に着いて止まっているわけなので膝が伸びていったとしても下腿は外旋することができません。下腿が外旋しないため、下腿の上にある大腿骨が内旋をしていくことで相対的に下腿が外旋していくような膝の中の仕組みを作っています。

 

このような膝の構造がありますので、ただ膝を屈曲したり、伸展したりするだけではなく、回旋運動も一緒に加えて屈曲・伸展の可動域練習をすることによって膝関節の純粋な動きを引き出すことができ、より専門的に膝の動きを誘導することができます。

 

家族でできる可動域練習

膝関節屈曲

膝関節の屈曲と可動域制限は、太ももの前面についている大腿四頭筋と言う筋肉が原因になることが多いです。

①仰向けで股関節を90°曲げた状態にし、大腿部を固定します。

②かかとがお尻に着くように膝を曲げていき、キープします。

 

膝関節屈曲へのスクリュー・ホーム・ムーブメントの応用

①膝を少し伸ばした状態で伸ばしたい足の、足の裏を施術者の胸に付けます。

②膝関節を曲げていくと同時に下腿を内旋の方向(下腿を内側に捻る動き)に手で押し込んでいきます。これを何度か繰り返していきます。

※スクリュー・ホーム・ムーブメントはOKCで起こるため、足首は固定しないように気をつけましょう。

 

もし対象者の方が膝の曲げ伸ばしに協力できるのであれば一緒に曲げ伸ばしを行い、筋肉を使いながら可動域を広げていくのも練習も良いかと思います。

 

膝関節伸展

 

 

 

膝関節伸展の可動域制限は、ハムストリングスと言うお尻から太もも、膝の後ろに付いている筋肉が原因となることが多いです。

①股関節を屈曲し、片手で大腿を固定しておきます。(余裕がある場合は大腿部の前面の筋肉を引き出しておいてあげます。)

②反対の手で膝を伸展の方向に伸ばしてキープします。

 

膝関節伸展へのスクリュー・ホーム・ムーブメントの応用

①仰向けの状態で伸ばしたい足の、足の裏を施術者の胸に付けます。

②膝関節を曲げた状態から、伸ばしていくと同時に下腿の外旋(下腿を外に捻る動き)の動きを手で誘導していきます。これを何度か繰り返していきます。

※スクリュー・ホーム・ムーブメントはOKCで起こるため、足首は固定しないように気をつけましょう。

 

もし対象者の方が膝の曲げ伸ばしに協力できるのであれば一緒に曲げ伸ばしを行い、筋肉を使いながら可動域を広げていく練習も良いかと思います。

 

 

膝関節屈曲可動域テスト

【開始肢位】背臥位で股関節屈曲位

【参考可動域】130°

【基本軸】大腿骨

【移動軸】腓骨(腓骨頭から外果を結ぶ線)

 

①ゴニオメーターを基本軸の大腿骨に合わせます。

②膝関節を曲げ、これ以上曲がらないところでストップします。

③移動軸をゴニオメーターに合わせます。

この時の角度が130°以下だった場合、膝関節屈曲の可動域制限があると言う判断になります。

 

膝関節伸展可動域テスト

【開始肢位】背臥位

【参考可動域】0°

【基本軸】大腿骨

【移動軸】腓骨(腓骨頭から外果を結ぶ線)

 

①ゴニオメーターを基本軸の大腿骨に合わせます。

②移動軸の腓骨頭と外果を結ぶ線にゴニオメーターを合わせます。このときの角度が0°以下だった場合、膝関節心手の可動域制限があると言うことになります。

③逆に膝関節が5°以上伸展する場合には過伸展している状態になるため、膝の緩さを測るための指標になります。

 

 

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目次

 

1.前腕の運動とは?

2.家族でできる可動域練習

3.前腕回外運動評価

4.前腕回内運動評価

 

 

前腕の運動とは

その中でも前腕回外運動はパワー重視の運動に必要となっております。この位置で肘を曲げていくときに上腕二頭筋がとても重要になります。上腕二頭筋の作業は肘関節の屈曲と前腕の回外にも作用していると言われています。

 

一方で前腕の回内の運動は巧緻運動に関与されると言われています。巧緻動作とは、細かい運動のこと、操作等に関与されています。パソコン操作、ピアノ操作、裁縫などが挙げられます。日常生活の中で回内の運動の方が多く回外運動の機会はそもそも多くは無い。

 

回内動作が多くなると回外方向に行きづらくなってしまいます。その原因として円回内筋、方形回内筋の2つが挙げられます。

 

ギプス固定など長期間の固定によって前腕の回外運動の制限になります。脳卒中後の方で肩関節の亜脱臼予防のため三角巾を使う方では、前腕を回外で固定するため長期間の三角巾の使用も方法によっては関節拘縮を起こしやすくなる可能性があります。前腕の回外運動、もしくは回内運動の可動域制限を受けやすくなります。

 

家族でできる可動域練習

前腕回外

前腕回外の可動域練習を行います。前腕には回内という運動もありますが特に可動域制限が出現しやすいのは前腕回外のとなっておりますので、前腕回外に着目して可動域練習を紹介します。

 

前腕の回外の可動域制限になる原因としては上腕骨の内側上顆から橈骨の外側についている円回内筋と言う筋肉が原因になることが多いです。円回内筋の作用は前腕の回内運動、肘の屈曲方向にも働きますのでここが硬くなると肘が伸びきらない状態になります。方形内勤は手関節付近にある筋肉です。

 

①開始姿勢は前腕の下にタオルを入れてあげることで円回内筋を少しリラックスでき、より効果が発揮されやすいです。

②①の状態をキープして片方の手で上腕骨を安定させておきます。

③もう片方の手で円回内筋が位置している前腕のボリュームゾーンの部分を持ってあげて前腕の回外運動方向へ動かします。

 

回外運動を行った際に抵抗が強すぎてしまいなかなか回外運動に誘導できない人には、

①先ほど実施した方法と同じように持ちます。

②一度回内運動と肘関節屈曲の方向へ動かしていきます。

③その後前腕回外運動を引き出していきます。この動きを反復し、前腕の回外運動が出てきたらタオルを取ります。

 

次により肘が伸びた状態で前腕の回外運動を促していきます。

①片方の手で肘の部分を止める

②もう片方の手関節の近い部分を持ち、前腕の回外運動を促していきます。何度か方向を誘導していき、より回外運動を引き出していきます。

 

前腕回外運動評価

前腕回外の動きです肘を90度屈曲位にも持っていきここから外側に開いていく動きを回外運動といいます

【参考可動域】90

【基本軸】上腕骨

【移動軸】手指を伸展した手掌面

【判定基準】角度が90度位以下の場合夜は回外の運動制限があり

 

前腕回内運動評価

運動方向は先程の前腕回外運動とは逆で手のひらを内側にもっていく運動となっております。

【参考可動域】90

【基本軸】上腕骨

【移動軸】手指を伸展した手掌面

【判定基準】角度が90度位以下の場合夜は回内の運動制限があり

 

 

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目次

 

1.歩行における足関節の重要性

2.足関節の運動の種類

3.家族でできる足関節可動域練習

4.足関節可動域テスト

 

 

歩行における足関節の重要性

歩行においては、外返しと外転と言う動きは特に維持しておくべき可動域になってきます。

 

歩行の時になぜ外返しと回転が必要かというと、足を振り出す際に足が内転して内返しに入ってきてしまうと内反と言う動きになってしまいます。 

 

この内反という状態だと足先が地面に引っかかり、つまずいたりしてしまうので転倒するリスクが高くなります。ですので、足を振り出すときの足部の動きにおいては、しっかりと外返しと外転の方向で可動域が維持されている必要があります。

 

足関節の運動の種類

足関節には背屈・底屈・内返し・外返し・内転・外転の6種類があります。

内返しの動きは、回内-内転-底屈の複合運動であり、外返しは回外-外転-背屈の複合運動となります。

 

家族でできる足関節可動域練習

内返し・外返し・内転・外転を同時に行う方法

①片方の手で足首を持ち安定させます。

②反対の手で踵を持ちます。

③踵を上下左右の方向へぐるぐると回すことで内返し・外返し・内転・外転を同時に可動域を広げることができます。

 

外転・外返しの可動域練習

最初に説明した通り、歩行において足関節の外返しと外転の可動域が制限されてしまうと転倒のリスクが高くなるため、外返しと外転の可動域はより柔らかくする必要があります。

①片方の手で足首を持ち安定させます。

②反対の手で踵を持ちます。

③足関節を背屈の背屈(足が上に曲がる動き)の方向へトレッチを加えていきます。

④背屈しながら小指側に倒していくことでより外返しの可動域訓練になります。

 

足底のストレッチ

そして外返しの動きが制限されると、小指側の筋肉が外側に動かなくなっていきます。その結果、親指側の筋肉が短縮し、小指側の筋肉が内側に入ってきてしまうことになります。

足の裏側も柔らかくしていくとすると開始の動きが出てくる可能性もあります。

①足の裏を両手で把持します。

②小指側のほうの筋肉を外側に開くようにしながら小指側をしっかりと持ち上げ、ストレッチをかけていきます。

 

足関節可動域テスト

足関節内返しの可動域測定

内返しの動きとは、親指側が上に上がる動きになります。

【測定肢位】膝関節屈曲位で行う

【参考可動域】30°

【基本軸】下腿軸への垂直線【移動軸】足底面

①基本軸にゴニオメーターを当てます。

②内返しの方向に足を動かしていきます。

③足が動かなくなったところでストップし、動いた移動軸にゴニオメーターを合わせます。

この時に出たこの角度が内返しの可動域となり、これが30°以下だった場合可動域制限があると言う判断になります。

 

 

外返しの可動域測定

外返しの動きは先ほどとは逆に小指側が上がっていく動きになります。

【測定肢位】膝関節屈曲位で行う

【参考可動域】30°

【基本軸】下腿軸への垂直線  【移動軸】足底面

①基本軸にゴニオメーターを当てます。

②外返しの方向に足を動かしてきます。

③足が動かなくなったところでストップし、動いた移動軸にゴニオメーターを合わせます。

この時に出たこの角度が外返しの可動域となり、これが20°以下だった場合可動域制限があると言う判断になります。

 

内転の可動域測定

内転の動きと言うのは親指が内側に水平に動いていくような動きになります。

【測定肢位】端坐位

【参考可動域】20°

【基本軸】第1中足骨と第2中足骨との間の中央線

【移動軸】第1中足骨と第2中足骨との間の中央線

①基本軸にゴニオメーターを当てます。

②内転方向に足を動かしていきます。

③足が動かなくなったところでストップし、移動軸に合わせてゴニオメーターを動かしていきます。

この時の角度が足関節内転の可動域となり、これが20°以下であれば可動域制限があるという判断になります。

 

外転の可動域測定

外転の動きと言うのは親指が外側に水平に動いていくような動きになります。

【測定肢位】端坐位

【参考可動域】20°

【基本軸】第1中足骨と第2中足骨との間の中央線

【移動軸】第1中足骨と第2中足骨との間の中央線

①基本軸にゴニオメーターを当てます。

②足を外転の方向へ動かしていきます。

③動かなくなったところでストップし、ゴニオメーターを当てていきます。

この時の角度が足関節内転の可動域となり、これが10°以下であれば可動域制限があるという判断になります。

 

 

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目次

 

1.足関節の運動とは?背屈と底屈

2.家族でできる可動域練習

3.足関節可動域テスト

 

 

 

足関節の運動とは?背屈と底屈

 

足関節の背屈の動きと言うのは足首が曲がり、つま先が上にあがる動きを背屈すると呼びます。参考可動域は20°になります。

背屈を行う主な筋肉には前脛骨筋があります。

 

足関節の底屈の動きと言うのは、足首が伸びてつま先が下に倒れていく動きのことをいいます。参考可動域は45°となります。

底屈を行う主な筋肉は腓腹筋やヒラメ筋があります。

 

 

 

家族でできる可動域練習

足関節背屈の可動域訓練

①膝を曲げた状態で自身の膝を相手の膝の下に入れます。

②片手で対象の足の足首を持ちます。

③反対の手で足の裏に手を回し、かかとを持ちます。

④左の手は動かさず、足の裏に入れている手を使って足首を背屈方向に伸ばしていきます。

⑤この時かかとを持っている手が親指の方向に行ってしまうと内反と呼ばれる方向に行ってしまうためできればまっすぐか、少し外側に曲げるようにしましょう。

 

腓腹筋のストレッチをしたい場合は自分の膝の上に乗せずに足首を背屈の方向に動かしていきます。

※この時動かすスピードが速すぎると反射が起きてしまい抵抗してしまうことがあるため、反射が起こらないようにゆっくりと伸ばしていきます。

 

10秒ほどキープして戻していくと言うものを3回ほど行います。(可動域制限が強い場合は30秒を3回行いましょう。)

 

足関節の底屈の可動域訓練

①膝関節の下に丸めたタオルなどを入れ、少し膝を曲げられるようにします。

②足首を包み込むように両手で持ちます。

③そこから足首をつま先の方向に伸ばすことによってスネの前側にある前脛骨筋と言われる筋肉を伸ばすことができます。

④下ろす際は指の親指が内側に入っていかないように、まっすぐ下か、少し外側に伸ばしていきます。

※この時も先ほどと早く動かさずゆっくりと動かしていきます。

10秒ほどキープして戻していくと言うものを3回ほど行います。(可動域制限が強い場合は30秒を3回行いましょう。)

 

 

足関節可動域テスト

関節可動域測定の基本

関節の可動域を測る際、基本軸と移動軸と言うものがあります。

足関節の背屈と底屈でいうと、基本軸は腓骨に垂直な線となり、移動軸は第5中足骨(小指の骨)になります。

この基本軸に対して移動軸が正常だとどれだけ動くかが参考可動域となります。

 

可動域を測定する際のポイント

可動域を測る際はまずは自動運動での可動域の測定と、その後に他動運動の可動域を図っていきます。

 

足関節背屈の可動域測定

①背臥位(仰向け)になります。

②対象の足の下あたりに、自分の膝を入れリラックスさせます。

③ ゴニオメーターを基本軸に当てます。

④自分で動かせる範囲での関節を動かしてもらいます。

⑤最初に当てた基本軸を動かさないように、第5中足骨にゴニオメーターを合わせます。

 

【他動運動の場合】

他動運動では測る人がしっかりと足首を手前に動かしていき、これ以上可動域が動かなくなるところで止めます。

ゴニオメーターを基本軸に合わせてそこから移動軸の第5中足骨に合わせて行きます。

ここで出てきた角度が足関節の他動運動での関節可動域となります。

 

この時の角度が20°以下の場合、可動域制限があるということになります。

また、自動運動で10°、他動運動では動かした場合は20°だった場合など、他動運動と自動運動で差異があった場合は筋力低下などが疑われます。

 

角度を測る際、膝の下に太ももなどを入れていますが、ふくらはぎには腓腹筋、ヒラメ筋と呼ばれる筋肉があり、腓腹筋は二関節筋と呼ばれる2つの関節をまたぐ筋肉となっており、膝関節の上から付いていて、足関節の先に付いています。

 

一方、ヒラメ筋は単関節筋と呼ばれる1つの関節しかまたがない筋肉となっています。膝をまたがず足首の下のほうについていくので単関節筋といます。

 

膝を曲げることによってニ関節筋である腓腹筋を緩ませることができ、先程の膝を曲げた状態での足関節の背屈の動きと言うのは腓腹筋が緩んだ状態で動かすので、ヒラメ筋の硬さを見ているわけになります。

 

ニ関節筋である腓腹筋を見る場合は、検査者の膝を抜いて被験者の膝を伸ばした状態でつま先を曲げていくと腓腹筋の硬さを測ることができます。

 

膝を伸ばした場合と膝を曲げた場合の2種類を測っておくことで、どちらが背屈の制限因子になっているかを予測することができます。

 

足関節の底屈の可動域測定

①姿勢は背臥位になります。

②対象の足の下に膝を入れ、リラックスさせます。

③自分で足関節を底屈方向に動かしてもらい可動域を確認します。

※ この時の角度に先にゴニオメーターを合わせておくと測りやすくなると思います。

④ゴニオメーターを基本軸に合わせます。

④自分で足関節を底屈方向に動かしてもらい移動軸にゴニオメーターを合わせて行きます。

ゴニオメーターで測った角度が、足関節の底屈の自動運動の関節可動域になります。

 

【他動運動の場合】

測る人が足首がつま先のほうに倒れるようにしっかりと動かしていきます。

これ以上足首が動かなくなったところでゴニオメーターを当てていきます。

ここで出てきた角度が足関節底屈他動運動での可動域になります。

 

この時の角度が45°以下だった場合関節可動域制限があると言う判断になります。

また自動運動と他動運動で差があった場合は筋力低下や何か問題があると言う解釈になります。


 

 

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目次

 

1.肘関節の働き

2.家族でできる可動域練習

3.肘関節の運動と構造

4.肘関節可動域テスト

 

 

 

肘関節の働きとは

非荷重関節と分類されています。非荷重関節とは、荷重されていない関節のことです。対になる言葉としては荷重関節といい、股関節や膝関節など常に荷重がかかる関節のことです。

 

この2つの大きな特色として荷重関節は体を支える為にしっかりと伸びる必要があります。非荷重関節はしっかかりと曲げる必要があります。なぜかというと、生活の中で肘関節は常に曲がって動作を行うからです。その為肘関節は曲がる可動域が大切になっていきます。

 

 

脳卒中後片麻痺の方は、連合反応等で屈曲方向に動く事は多く、筋緊張(筋肉のこわばり)も屈曲の方向が強くなり、肘は曲がるけど伸びにくい人がいます。その場合は伸展の可動域練習が必要となります。

 

家族でできる可動域練習

肘関節伸展

 

①姿勢は背臥位(仰向け)で行います。肘の下にタオルなど入れていきます。

※肘関節伸展の可動域は5°なので、タオルがない状態で伸ばしたとしても0°しかいきませんので、タオルを入れてあげることで肘関節伸展5°を引き出していくことができます。

 

②肘関節伸展の可動域制限を作り出す原因として上腕二頭筋による制限があります。特に上腕二頭筋の遠位部(肘に近い所)が固くなりやすいので、今回はここに介入していきます。

 

 

 

【把持する場所】肘を曲げた際に力こぶが出る所が上腕二頭筋

 

①片方の手で先ほどの力こぶの所を持って安定させます。

 

②もう片方の手で前腕を回外位とし、肘関節屈曲方向に誘導します。この方法により上腕二頭筋が縮んでいきます。

 

③次に肘関節伸展の方向に伸ばしていきながら、上腕二頭筋を顔の方向に伸ばしていきます。この方法を何度か行っていきます。

 

④この時に注意しなければいけない所として、上腕二頭筋が内側の向きでやらないことです。そうすると、軸がずれてしまう為、しっかりと上腕二頭筋が天井を向く方法位置が確保できてからやることが重要です。もしこの状況が作れない方がいましたら、肩関節外旋を出す練習で紹介した動画を参照していただければ幸いです。

 

肘関節屈曲

肘関節の可動域制限因子として、上腕三頭筋が原因になることが多いです。今回は上腕三頭筋の介入方法を紹介します。

 

上腕三頭筋は上腕二頭筋(力こぶが出る場所)の後ろ側に位置しています。

 

①上腕三頭筋を片方の手で安定させます。

 

②もう片方の手で肘を伸展方向に誘導していきます。

 

③ここから肘関節屈曲方向に曲げていきますが、この時上腕三頭筋を動かない様に止めていきながら肘関節がしっかり曲がっていくように誘導します。

 

④肘関節を曲げていって止まったところで、上腕三頭筋を上下に動かしていきます。特に下に引き下げていくことで、上腕三頭筋の柔軟性が出ます。

 

 

肘関節遠位部の硬さが出やすいことが多いです。

 

①片方の手で持ち手を上腕三頭筋の遠位部に移動します。

 

②肘伸展を誘導していきます。

 

③肘を曲げていきます。この時も上腕三頭筋は止めた状態で行います。曲げた状態でさらに上腕三頭筋を下側に引き下げていきます。

 

④動作を数回行います。

 

 

上腕三頭筋の遠位部だけではなく近位部(脇に近い部分)が硬くなることが多いのです。

 

①脇の下の上腕三頭筋を持ち

 

②脇から引き上げていくように動かしていきます。

 

③別視点

 

肘関節の運動と構造

肘の運動

 

運動方向としては、肘を曲げる屈曲運動、肘を伸ばす伸展運動があります。

もう一つは前腕の回内運動、回外運動といい、肘関節運動に関わってきます(前腕に関しては別の記事でお話させていただきます)。

 

肘関節の構造

Thanks to @visiblebody

肘関節の構成として、①腕尺関節(上腕骨と尺骨で構成)、②腕橈関節(上腕骨と橈骨で構成)、③上橈尺関節(尺骨と橈骨で構成)の3つで構成されています。

 

①腕尺関節は蝶番関節(一軸性)となっており、主に屈曲と伸展を担っています。

 

②腕橈関節は球関節(多軸性)となっており、自由度が高い関節となっています。

 

③上橈尺関節は車軸関節(一軸性)となっており、尺骨を軸にして橈骨が回り込むことで、前腕の

回内外の運動に寄与しています。

 

肘関節が上腕骨にはまり込む所を④肘頭窩といい、ここにはまり込む骨は尺骨となっています。肘関節がしっかりと伸びていく為には、尺骨が肘頭窩にはまりこんでいく必要があります。

 

肘関節可動域テスト

肘関節屈曲

【基本軸】上腕骨

【移動軸】橈骨

【参考可動域】145°

※この時手は自分の方向に向くように前腕回外位で行います。この時の角度が145°以下だった場合、肘関節の屈曲可動域制限があると判断します。

 

肘関節伸展

【基本軸】上腕骨

【移動軸】橈骨

【参考可動域】5°

※この時手は自分の方向に向くように前腕回外位で行います。この時の角度が5°以下だった場合、肘関節の伸展可動域制限があると判断します。

 

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目次

 

1.肩関節内旋・外旋とは?

2.家族でできる可動域練習

3.肩関節内旋・外旋の可動域検査

 

 

 

肩関節内旋・外旋とは?

 

脳卒中後の肩関節内旋・外旋運動、特に外側に手を広げる外旋運動はとても制限されやすく、内旋運動は内側に縮こまってしまい固くなってしまう傾向があります。

 

これらの可動域制限は肩関節の屈曲や外転運動にも関係しており、あらゆる肩の動きで可動域練習や評価を行っていく必要があります。

 

 

家族でできる可動域練習

 

肩関節の外旋可動域は制限される傾向があり、特に脳卒中後の片麻痺の方には多いです。今回の可動域練習は外旋の可動域をお伝えします。

 

 

姿勢は背臥位姿勢(仰向け)で行います。まず肩甲骨・肩関節周りの筋肉の柔軟性を出しておく必要があります。

 

今回は肩から肘にかけてついている上腕二頭筋に対しての介入方法です。大胸筋と上腕二頭筋は固くなりやすい筋肉です。肩関節外旋可動域制限がある人は、上腕二頭筋が内側へ向いており、肩関節が内旋位になっている方が多いです。

 

前回の動画で伝えた大胸筋(水平伸展の動画)を緩めた後に上腕二頭筋もしっかりと外旋の方向に引き出す必要があります。

 

 

片方の手で上から上腕二頭筋(力こぶがでる部分)を持って、もう片方の手で後ろから上腕三頭筋を持ちます。

①片方ずつ持った状態で上腕二頭筋を外旋方向に持っていきながら、

②下側の上腕三頭筋を下側から潜り込ませるように上腕二頭筋を外旋方向に引き出していきます。繰り返し実施していきます。

 

 

上腕二頭筋の部分を下側にずらしていき(肘側の方へ)、同様に上腕二頭筋を外旋方向に誘導していきます。上腕二頭筋をまっすぐな位置に持ってきてあげることで、肩関節外旋の可動域が向上する可能性があります。

 

 

肩関節内旋・外旋の可動域検査

 

肩関節を測るポジションとして、3つのポジションがあります。

①肘が体についた状態での内旋、外旋運動をファーストポジション(1st ポジション)といいます。

②肩関節外転90°をしたところでの内旋、外旋運動をセカンドポジション(2ndポジション)といいます。

③肩関節屈曲90°をしたところでの内旋、外旋運動をサードポジション(3rdポジション)といいます。

 

 

なぜ3つに分けられているのか。それは肩関節の関節形状が球関節であるからです。球関節は自由度が高く、色んな方向に動くからです。その為ポジションを変え可動域を測ることで、制限因子がどこにあるか判断できるからです。

 

例えばセカンドポジションの外旋可動域がファーストポジションで計測した可動域よりも著しく低い場合、ファーストポジションとセカンドポジションの違いは何かを考えていく必要があります。この場合、肩の下の筋肉や前面の筋肉が伸張されていくことによって制限を起こしている可能性があります。

 

次にセカンドポジションでの外旋運動よりもサードポジションでの外旋運動が行かなかった場合、肩関節の内転、外転という違いがあります。

 

すなわち、後面筋が関係しています。サードポジションでの肩関節外旋運動が著しく提言された場合は肩関節の後面筋の伸張により制限があると判断されます。

 

 

ファーストポジション(1st ポジション)

外旋運動

【開始肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(親指が上を向いた状態)

【参考可動域】60°

【基本軸】肘を通る前額面への垂直線   【移動軸】尺骨

外旋方向に誘導していき、エンドフィール(最終域の抵抗感)を感じながら計測します。この時外旋60°以下の場合、可動域制限があると判断されます

 

内旋運動

【開始肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(親指が上を向いた状態)

【参考可動域】80°

【基本軸】肘を通る前額面への垂直線   【移動軸】尺骨

内旋方向に誘導していき、エンドフィール(最終域の抵抗感)を感じながら計測します。この時内旋80°以下の場合、可動域制限があると判断されます。

 

 

セカンドポジション(2nd ポジション)

外旋運動

【開始肢位】肩関節外転90°、前腕は中間位

【参考可動域】90°

【基本軸】肘を通る前額面への垂直線   【移動軸】尺骨

外旋方向に誘導していき、エンドフィール(最終域の抵抗感)を感じながら計測します。この時外旋90°以下の場合、可動域制限があると判断されます

 

 

内旋運動

【開始肢位】肩関節外転90°、前腕は中間位

【参考可動域】70°

【基本軸】肘を通る前額面への垂直線   【移動軸】尺骨

内旋方向に誘導していき、エンドフィール(最終域の抵抗感)を感じながら計測します。この時内旋70°以下の場合、可動域制限があると判断されます。

 

 

サードポジション(3rdポジション)

外旋運動

【開始肢位】肩関節屈曲90°、前腕中間位、肘関節屈曲90°。

【参考可動域】114°

【基本軸】肘を通る矢状面への垂直線   【移動軸】尺骨

外旋方向に誘導していき、エンドフィール(最終域の抵抗感)を感じながら計測します。この時外旋114°以下の場合、可動域制限があると判断されます

 

内旋運動

【開始肢位】肩関節屈曲90°、前腕中間位、肘関節屈曲90°。

【参考可動域】57°

【基本軸】肘を通る矢状面への垂直線   【移動軸】尺骨

内旋方向に誘導していき、エンドフィール(最終域の抵抗感)を感じながら計測します。この時内旋57°以下の場合、可動域制限があると判断されます。

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