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2025.01.12 パーキンソン病

【医療従事者向け/最新版】パーキンソン病における神経精神病学の問題を徹底解説

 

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8時間目:パーキンソン病における神経精神病学の問題

 

パーキンソン病(PD)は、主に運動症状が注目される疾患ですが、進行に伴い神経精神病学的問題が出現することが知られています。これらの問題は運動症状に先行する場合もあり、患者の生活の質(QOL)に大きな影響を与えるため、早期発見と適切な管理が重要です。






無関心(Apathy)

無関心は、患者が日常活動への興味ややる気を失う症状です。うつ病と非常に類似していますが、無関心の場合は情緒的苦痛を伴わない点が特徴です。例えば、以前は楽しんでいた趣味や社会的交流への関心が薄れますが、悲しみや無力感は伴いません。この症状はドーパミン経路の異常と関連しており、パーキンソン病の進行とともに顕著になります。

 

診断と管理

・無関心を診断するには、Apathy Evaluation Scale(AES)やその他の心理測定ツールが有用です。

・治療としては、プラミペキソールやロピニロールなどのドパミン作動薬が一定の効果を示す場合があります。また、モダフィニルのような覚醒促進薬が有効であることも報告されています。

・患者とその家族に対して無関心が疾患の一部であることを説明し、理解を深めることが重要です。








考速度の低下(Bradyphrenia)


思考速度の低下は、PDにおける最も一般的な認知障害の一つであり、患者が情報を処理する能力が遅くなることを指します。例えば、会話の中で適切な言葉が思い浮かばず、コミュニケーションが困難になることがあります。この障害は患者の社会生活や仕事に重大な影響を及ぼします。


具体例

・家族や友人との夕食会で、会話のペースについていけなくなり孤立感を感じる。

・重要な意思決定が必要な場面で、情報を迅速に処理できないため困難を経験する。

管理の戦略

・定期的な神経心理学的評価を通じて、認知機能の進行をモニタリングします。

・認知リハビリテーションを通じて、記憶力や注意力を向上させるトレーニングを実施します。

・環境調整を行い、患者がゆっくりと意思決定できるよう支援します。







認知症(Dementia)

パーキンソン病に関連する認知症(PDD)は、疾患の進行とともに発症し、高次脳機能の低下を引き起こします。主に新皮質が影響を受け、記憶、注意、言語能力、視空間認知などが障害されます。進行は緩徐ですが、患者の独立性を大きく損ないます。

症状

・新しい情報を覚えることが困難になる。

・日常のルーチンを維持するのが難しくなる。

・視空間の認知障害により、運転や調理が困難になる。

 

治療アプローチ

・コリンエステラーゼ阻害薬(リバスチグミン、ドネペジル)を使用し、認知機能の低下を遅らせる。

・ケアプランを作成し、患者と家族の負担を軽減します。





精神病(Psychosis)

精神病は、PD患者の50%が経験する症状であり、幻覚、妄想、さらには行動の変化を引き起こします。これらの症状は疾患自体に起因する場合もあれば、治療薬(特にドパミン作動薬)の副作用として発生する場合もあります。

 

主な症状

・幻覚:主に視覚的なもので、人物や物体が見える。

・妄想:家族が敵対的であると感じるなど、非現実的な信念。

治療

・クエチアピンやピマバンセリンなどの非定型抗精神病薬が有効です。

・症状の重篤度に応じて薬物治療を調整し、副作用を最小限に抑えます。







5. せん妄(Delirium)

入院中のPD患者はせん妄を発症するリスクが高く、環境の変化や薬剤の影響が主な原因となります。せん妄は一過性ですが、適切に管理しない場合、患者の予後に悪影響を及ぼす可能性があります。

管理

・入院中の環境を整え、刺激を最小限に抑える。

・ベンゾジアゼピンの使用を避け、非薬物療法を優先します。








睡眠障害

睡眠障害はPD患者に非常に一般的であり、日中の眠気や集中力の低下を引き起こします。代表的な症状として、REM行動異常(REMBD)、夜間頻尿、睡眠の断片化が挙げられます。

治療

・REMBDにはクロナゼパムが有効です。

・睡眠環境の改善を推奨します。部屋を暗くし、規則的な就寝スケジュールを守ることが重要です。








自律神経症状

自律神経障害は、血圧調整、消化、発汗などの機能に影響を与えます。特に起立性低血圧は転倒リスクを高めるため、慎重な管理が必要です。

治療

・血圧低下を防ぐためにフルドロコルチゾンやミドドリンを使用します。

・食事の際に塩分を増やす、弾性ストッキングを使用するなどの非薬物療法を併用します。







消化管の問題

便秘や胃不全麻痺はPD患者で非常に一般的です。これらは薬物吸収に影響を与えるため、特に注意が必要です。

治療

・水分と食物繊維の摂取を増やし、下剤を必要に応じて使用します。

・胃不全麻痺には、プロキネティック薬(例:ドンペリドン)が推奨されます。



 

参考文献

1.”Apathy in Parkinson’s Disease: Defining the Park Apathy Subtype” (2022).
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35884730/ 

2.”Cognitive Impairment in Parkinson’s Disease: An Updated Overview Focusing on Emerging Pharmaceutical Treatment Approaches” (2023).  
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37893474/

3.”Parkinson’s Disease and Dementia with Lewy Bodies: One and the Same” (2024).  
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38640172/
 

4.”Sleep disturbances, cognitive decline, and AD biomarkers alterations in early Parkinson’s disease” (2024).  
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38764318/

5.”Unraveling Autonomic Dysfunction in GBA-Related Parkinson’s Disease” (2023).  
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38026514/

6.”Gastrointestinal dysmotility in rodent models of Parkinson’s disease” (2024).  
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38261717/

 

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