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2025.06.18 パーキンソン病

【最新情報】腸と脳はつながっている?パーキンソン病と便秘・腸内フローラの最新研究




 

腸と脳はつながっている?

パーキンソン病と“腸-脳軸”の最新研究に迫る

 

1. パーキンソン病と「腸」の意外な関係

パーキンソン病というと、手のふるえや動作の鈍さなど、「脳の病気」という印象が強いかもしれません。しかし、実は発症のはるか前から、便秘や腸の不調が先に起こっていることが知られています。

このことから注目されているのが、「腸-脳軸(gut-brain axis)」という考え方です。腸と脳が神経や免疫、ホルモンを通じて双方向に情報をやりとりしているという仕組みで、近年の研究では、腸内環境の異常がパーキンソン病の発症に関与している可能性が指摘されています。


2. 「腸-脳軸」とは?:腸は“第二の脳”だった

私たちの腸には、腸内細菌(腸内フローラ)が数百〜数千種類も棲んでおり、そのバランスが健康に深く関わっています。さらに、腸には1000億個以上の神経細胞があり、**脳とほぼ独立して働く神経系(腸管神経系)**が存在します。

この腸と脳の間をつなぐ“通信回線”が「腸-脳軸」で、以下の3つを通じて情報がやり取りされます:

・迷走神経(神経伝達)


・サイトカイン
(免疫物質)


・ホルモン類
(内分泌系)

この仕組みが破綻すると、腸内の炎症やバリア機能低下が神経変性疾患に波及する可能性があると考えられています。







3. パーキンソン病発症の起点は腸?

近年の研究では、パーキンソン病患者の腸内環境の乱れ(ディスバイオーシス)が報告されています。さらに、注目されているのが「αシヌクレイン」という異常タンパク質です。

・健常な脳でも存在するこのタンパク質が、異常に凝集・蓄積して神経細胞死を引き起こすことが知られています。

・Braak仮説(2003)によると、αシヌクレインの蓄積は腸の神経叢から始まり、迷走神経を通って脳に広がる可能性があるとされています。

この仮説を裏付けるように、動物実験でも、腸に異常αシヌクレインを導入すると、後に脳にも同じ変性が波及することが示されました。



図:下記文献より引用(Braak, H. et al. 2003)




4. 腸内環境を整えることで予防できるのか?

完全に解明されたわけではありませんが、いくつかの研究では腸内細菌叢の改善がパーキンソン病の症状軽減に寄与する可能性が報告されています。

✔️注目されている介入方法

・プロバイオティクス(善玉菌)摂取

・プレバイオティクス(腸内細菌のエサとなる食物繊維)

・地中海式食事(多様な植物性食品)

・便移植(FMT)の試験的実施(臨床研究段階)

ただし、これらは補助的アプローチであり、治療法ではない点に注意が必要です。





5. 今後の研究など

腸-脳軸と神経疾患の関係は、まだ発展途上の分野です。しかし、パーキンソン病に関しては以下のような方向で研究が進んでいます。

・バイオマーカーとしての腸内細菌
 → 発症前からの変化を捉え、早期診断に応用

・治療対象としての腸
 → 腸内炎症を抑えることで脳の変性進行を遅らせる可能性

・個別化医療
 → 腸内フローラに応じた食事・薬のカスタマイズ





 

6. まとめ:腸に注目する新しいパーキンソン病対策

パーキンソン病は脳だけを見る時代から、全身、特に腸の状態を見る時代へと変わりつつあります。

「便秘が長く続いている」「腸の調子がいつも悪い」――こうしたサインが、もしかしたら神経の変化のはじまりかもしれません。腸内環境に目を向けることは、パーキンソン病の予防や早期発見につながる可能性があるのです。




7. 引用・参考文献

・Braak, H., et al. (2003). Staging of brain pathology related to sporadic Parkinson’s disease. Neurobiology of Aging.

・Sampson, T. R., et al. (2016). Gut microbiota regulate motor deficits and neuroinflammation in a model of Parkinson’s disease. Cell.

・Bedarf, J. R., et al. (2017). Functional implications of microbial and viral gut metagenome changes in early stage L-DOPA-naïve Parkinson’s disease patients. Genome Medicine.

・Heintz-Buschart, A., et al. (2018). The nasal and gut microbiome in Parkinson’s disease and idiopathic rapid eye movement sleep behavior disorder. Movement Disorders.



パーキンソン病についてもっと詳しく知りたい方はこちら




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