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2024.12.19 パーキンソン病

【医療従事者向け/最新版】診断はどのように行われますか?―無動・振戦・固縮・姿勢反射障害―

 

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5時間目:パーキンソン病の診断はどのように行われますか?

パーキンソン病(Parkinson’s disease, PD)は主に中脳黒質緻密部(substantia nigra pars compacta)のドーパミン作動性神経細胞脱落を特徴とする進行性神経変性疾患です。臨床的には運動症状(motor symptoms)と非運動症状(non-motor symptoms)の双方がみられ、これらを総合的に評価することで、診断精度が高まります。

 

基本的な運動症状(Motor Symptoms)の診断基準


パーキンソン病の代表的な4大運動症状

無動(Bradykinesia)
動作開始の遅延、運動速度や振幅の低下を含む動作緩慢が最も特徴的です。指間タッピングや前腕回内回外、開閉拳などの反復運動検査で明らかになります。



安静時振戦(Rest Tremor)
四肢や下顎、唇などが、安静時に4〜6Hz程度の振戦を呈します。典型的には「ピル・ローリング様振戦(pill-rolling tremor)」と呼ばれ、母指と示指が丸薬を転がすような動きを示します。ただし、振戦が軽度または非典型的である患者も多く、振戦がないことが必ずしもパーキンソン病除外を意味するわけではありません。

 

 

筋固縮(Rigidity)
他動的な関節可動時に一定の抵抗が生じ、いわゆる「歯車様固縮(cogwheel rigidity)」や「鉛管様固縮(lead-pipe rigidity)」が認められます。通常、左右非対称に現れることが多く、腋窩や肩甲帯周囲、下肢など幅広い部位が影響を受けます。

 

 

 

姿勢反射(保持)障害(Postural Instability)
パーキンソン病の後期段階でよく見られ、立位バランスの保持が困難となり、歩行時の不安定性や転倒リスクの増大をもたらします。特に後方への転倒(retropulsion)が典型的で、引っ張られた際にバランスを保てず倒れやすくなります。

 




姿勢反射障害とは別に「すくみ足(Freezing of gait)」という症状が出現します。これは患者が歩いている最中に「足が地面に張り付いている」感覚を感じることが多く、道の途中でフリーズしたり、立ち上がってそれ以上動くことができなかったりする状態です。病気が進行するにつれて症状は悪化し、多くの人は杖や介助に頼ることになります。4大徴候には直接該当しないことが注意点です!

 



診断上のポイントとして、パーキンソン病が疑われる場合には

・無動(Bradykinesia)が必須

・無動に加え、安静時振戦、筋固縮、または姿勢反射障害のうち少なくとも一つを満たすこと

これらを臨床的に確認することが基本となります。

 

 

 

 

補助的評価:画像診断や非運動症状


パーキンソン病は主に臨床診断に基づきますが、近年、画像診断技術やバイオマーカー研究が進展しています。また、非運動症状(例:嗅覚低下、睡眠障害、便秘、抑うつ、認知機能低下、自律神経異常など)は、診断の補強材料となり得ます。

 

画像評価
DATスキャン(ドーパミントランスポーターSPECT)を用いると、線条体ドーパミン神経末端の減少を可視化できます。MRIは他のパーキンソン症候群(PSP、MSA、CBDなど)との鑑別に有用です。
超音波検査(Transcranial sonography)では、黒質エコージェニシティの異常増加が報告されていますが、診断精度には限界があります。

 

最新のバイオマーカー研究
アルファシヌクレイン(α-synuclein)の蓄積は病理学的特徴の一つであり、脳脊髄液中や生検標本中での測定が試みられていますが、診断的有用性は研究段階です。さらに、皮膚生検でのリン酸化α-シヌクレイン染色などが研究されており、将来的な早期診断・鑑別に期待が寄せられています。

 

国際的診断基準
運動症状を基盤としつつ、非運動症状や画像所見を考慮した「Movement Disorder Society (MDS)」による最新の診断基準が提唱されています。これらを用いることで、パーキンソン病と類似疾患との鑑別精度が向上しています。

 

鑑別診断
パーキンソン病には、進行性核上性麻痺(PSP)、多系統萎縮症(MSA)、皮質基底核変性症(CBD)、血管性パーキンソニズム、薬剤性パーキンソニズムなどの鑑別が必要です。鑑別には、臨床症状の推移、画像所見、薬剤歴の詳細把握が不可欠です。




 

 

 

早期診断の重要性


早期診断は、ドーパミン補充療法(L-DOPA製剤やドーパミンアゴニスト)およびリハビリテーション、運動療法などの介入戦略を適正な時期に開始するために極めて重要です。また、非運動症状への対処や多職種チームによる包括的ケアにより、患者のQOL向上が期待されます。

 

 

 

 

引用文献

 

1.Postuma RB, Berg D, Stern M, et al. MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson’s disease. Movement Disorders. 2015;30(12):1591–1601.
 https://doi.org/10.1002/mds.26424

 

2.Jankovic J. Parkinson’s disease: clinical features and diagnosis. Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry. 2008;79(4):368–376.
 https://jnnp.bmj.com/content/79/4/368

 

3.Kalia LV, Lang AE. Parkinson’s disease. Lancet. 2015;386(9996):896–912.
 https://doi.org/10.1016/S0140-6736(14)61393-3

 

4.National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Parkinson’s disease in adults: diagnosis and management. NICE guideline [NG71]. 2017.
 https://www.nice.org.uk/guidance/ng71

 

5.Tolosa E, Garrido A, Scherer K, et al. Diagnostic criteria of Parkinson’s disease. Handbook of Clinical Neurology. 2022;183:3–18.  
 https://doi.org/10.1016/B978-0-12-819999-0.00001-3

 

 

 

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