リハビリトレーニングの自律に向けて
サイト内ではトレーニングメニューを写真付きで紹介していくため、読者があまり難しい専門用語に惑わされないよう配慮しています。健康になるために、どんなことができるのか知りたい! そんな思いがあると思います。難しい医学用語がない文章やイラストを期待していると思います。しかし,どうしても最低限、理解していただきたい神経科学の知識や、脳の可塑性に関する原則などもあります。
当サイトで紹介する、「病気を学ぶ」「リハビリを学ぶ」等の内容を通して、最低限の部分を学習してから、トレーニングに臨んで頂きたいです。最低限だけ抑えて、あとはトレーニングを進行しながら徐々に学習していけばよいと思われます。知りたいのは「機能が回復するテクニック」だと思いますが、知識があれば、既存の方法と組み合わせて能力を最大限高めるための、自身のオリジナルの方法も作成できるのです。そのために最低限の知識を身につけて頂ければと思います。
強制ではありませんが、可能であれば、12週間以上サポートできるセラピストやトレーナーをつけることをお勧めします。不可能であれば、当サイトの内容を十分に理解してください。機能回復のためのトレーニングは価値がありますが、価値を発揮するには以下の事を頭に入れておいて頂きたいです。
・どの程度理解ができたか
・あなたに「意味のある」ものであったか
・どのくらい日々の生活に取り入れられるか
トレーニングはシンプルに生活に取り入れられるべきです。そのために以下5つのポイントを習慣的に実践する必要があります。
・読む ・理解する ・実行する ・持続する ・達成する
回復途上で出会う色々なセラピストが、「これが完璧な治療法だ」と全てを知っているように方法を提案してくるかもしれません。しかし、最新の科学的根拠を取り入れてないとすれば、それは無知で傲慢な治療者である証拠です。回復のためのプログラムは科学と共に常に進化するものです。そういった意味で治療者も患者様も、共に学習者なのです。治療者にはそういった態度が求められます。最高の教師というものは常に専門家から学んでおり、その教えを生徒に適用しています。
したがって、いきなり完全なものを求めるのではなく、あくまで開始の段階に過ぎない、という視点も持つべきです。慣れてきたら、必要があれば新しい技術を習得し、上手くいけばオリジナルの方法としてどんどん進めてください。オリジナルの成功体験があれば、是非STROKE LAB にその方法を教えていただきたいです。当施設ではより良いセラピーを、常に追求して参ります。
巷にある、「この方法ですべて解決!」といった方法は残案ながら万能ではありません。こういったドライで浅はかな方法を万人に適応することほど悲惨なことはありません。脳卒中の本質的な改善のためには、その中身と過程を十分に理解しなければならず、そのために多くの時間をとらなければいけないのです。面倒に感じるかもしれませんが、一つ一つ知識と技術をあなたの脳に刻んでいくことで、回復の潜在能力が最大化されることを忘れないでください。
「知識を得たので、回復する要因には何があるか知っているが、一つ一つ完全に分かっているわけではない。初めてやることも、勉強はしてみたが、実際にはやってみないと分からない。でも、挑戦する。やりながら、ひたすら答えに向かっていくだけだ。挑戦は、失敗へとつながるかもしれない。けど失敗は、創造的な答えを産み出すかもしれない。常に新しい情報や刺激に目を開き、耳を傾け、積極的に挑戦していく。」あなた自身が例えばこんな心境が作れれば、最高の状態と言えます。
アメリカのノーベル賞受賞者の物理学者、リチャード・ファインマンは、「作業アイデアを効率的に開発するために、できるだけ早く失敗するように努力するべきだ。」と述べています。また、アメリカの軍隊役人のジョージ・パットン将軍は、「ゴールの地点や場所だけ伝えても、道のりを伝えなければ、過程で出くわすものには対処できないだろう」と述べています。
これらは問題解決のためには正解を知るだけではなく、過程でいかに失敗し、困難を経験し、乗り越える力が真に大切かを説いたものです。リハビリテーションの過程にも、全く同じことが言えるのではないでしょうか?背景となっている知識や技術、取り組む過程でおこる障害、乗り越えた際の成長、自立に向けた未来…当サイトでは、表面的な方法論でなく、全体像かつ本質にせまりながら、回復のためのテクニックを提供していきたいと考えています。ぜひ努力を重ね、回復を勝ち取りましょう!
当サイトで紹介するトレーニングは、ある人が行った例というレベルではなく、多くの脳卒中患者様からのデータをもとに作成されたものです。単一の症例紹介ではなく、根拠として積みあがった証拠と、患者様の直接の意見、他の治療との比較などから総合的に出来上がったものです。
ただし脳卒中は色々な側面があるので、トレーニングの効果を検証するということは実は難しいことです。重要な視点で覚えていただきたいのは、セラピストが何も行わなかった際に自分でできるか、という観点です。できなかったこと、実行していなかったことが、一人でできるようになる。それを目指していけば、何年も、何百ものアイディアと出会うことになるかもしれません。
脳卒中による部分的麻痺は、病院での専門的な治療を受けた後、自宅で“能動的”に改善させていく方法を必要とします。単に麻痺している手足をそっと置いておいたり、他の腕などでさすったり伸ばしたり、結果的に自発的に動こうとしないで、他人からの援助をすぐに頼る癖をつけてはいけません。
この良くない状況を主体的に捉えられず、あたかも他人ごとのように傍観している、成す術がない、そんな状況に陥ってしまうことは最も恐れるべき事態です。「患者様自身が自らの意志のもと、しっかりと全身で能動的に動いていく」。唯一これこそが機能改善を保証でき、多くの根拠が支持している事実です。
機能改善には能動性、積極性が必要不可欠であり、慎重に行えば、全ての試みや挑戦は成功へとつながります。この能動性と積極性を生活で出すにはメンタルトレーニングと行動変容が重要であり、ある研究グループは、メンタルトレーニングをしている患者様とそうでない患者様で、四肢の機能改善に差があることを発見しました。彼らはメンタルトレーニングで患者様自身が身体に向き合い、現状を理解し、改善方法を知ることで、身体の使い方が大きく変わったのでは?という推測を立てています。
また、メンタルトレーンングには例えば全く動かない手をあたかも動くように脳に暗示させることで、少しずつ自発的な動きが出るようになるというテクニックも存在します。“真に麻痺している状態”とは実は少ないということを覚えておいてください。改善が少ない状況が続いても、この弱さは克服されるべきものである、と強く念じ続けることが大切です。
リハビリテーションは、元来、脳卒中の生存者などは、死の淵から生還しても障害が残った状態で成す術がなく、家族や行政の支援に強く依存傾向にありました。まるで自分自身を他から見物されているような状態だったのです。その状態からの脱却を目指し、機能回復を中心とした全人間的復権のためのリハビリテーションが提唱されてきました。
科学的には、脳の可塑性という性質を利用して、自分自身で脳内ネットワークを再配線することが動きの改善に必要不可欠と分かりました。脳には信じられないほど、常に変化しうる性質を秘めています。本サイトで紹介する運動が、単なる運動ではなく、脳内ネットワークを再配線するためのものだという認識を持ち、それぞれの運動に臨んでみて頂ければ幸いです。
国家資格(作業療法士取得)
順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務後,
御茶ノ水でリハビリ施設設立 7年目
YouTube2チャンネル登録計40000人越え
アマゾン理学療法1位単著「脳卒中の動作分析」他
「近代ボバース概念」「エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション」など3冊翻訳.
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