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2024.12.09 パーキンソン病

【医療従事者向け/最新版】パーキンソン病の診断 ー類似疾患との鑑別まで解説ー

 

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3時間目:パーキンソン病の診断

 

パーキンソン病(PD)は、黒質ドパミン作動性神経細胞の変性とレビー小体を病理的特徴とする進行性神経変性疾患であり、主に運動症状として無動、安静時振戦、固縮、姿勢反射障害が臨床上重要な位置を占めます。一方で、非運動症状(嗅覚障害、睡眠行動異常、自律神経症状、認知変化など)が早期から出現することがあり、診断を複雑化しています。


 

パーキンソン病診断の基本的考え方


PD診断は、主観的評価に依存する部分が大きく、また非特異的な初期症状や個人差の大きい症状表現から、初診時に明確な確定診断が難しいことが多いです。そのため、複数回の外来フォローアップと臨床的評価、治療反応性(特にレボドパ反応性)の確認が欠かせません。長期的な視点を持ち、時間経過に伴う症状推移の把握が精度の高い診断に繋がります。

 

主要症候(四大徴候)


☑ 無動(Bradykinesia):
患者は随意運動の開始が遅くなり、全体的な動作が緩慢化します。これはPD診断の必須条件とされ、他の特徴所見と組み合わせて診断精度を高めます。

☑ 安静時振戦(Rest Tremor):
手指や足に生じる4-6Hz程度の振戦で、安静時に顕著となり、注意がそれると増強する一方、意識的な抑制で一時的に軽減可能な場合もあります。典型的には「丸薬丸め様(pill-rolling)」振戦と表現されます。

☑  固縮(Rigidity):
上下肢や軸性筋群に均等な筋緊張亢進が生じ、「鉛管様(lead-pipe)」の抵抗感が特徴的です。

☑  姿勢反射(保持)障害(Postural Instability):
バランス維持が困難となり、転倒リスクが増大します。ただし、初期には必ずしも顕在化せず、後期症状であることが多いです。


 

 

パーキンソン病診断基準と補助的検査


☑ 診断基準:
英国脳バンク基準やMDS(Movement Disorder Society)診断基準などが用いられ、無動性と他の主要特徴の組み合わせやレスポンシブなレボドパ反応性が考慮されます。

☑ DATスキャン(ドパミントランスポーターイメージング):
核医学的評価(123I-FP-CIT SPECT)で黒質線条体系ドパミントランスポーター減少を確認することで特異度を高めることができます。ただしDATスキャンは、全ての類似疾患を除外できるわけではなく、臨床所見との組み合わせが必要です。

☑ その他の補助検査:
嗅覚検査による嗅覚低下評価、REM睡眠行動障害(RBD)のポリソムノグラフィ検査、自律神経機能検査などが早期PD診断に有用と報告されています。

 







類似疾患との鑑別


☑ Atypical Parkinsonian Syndromesとの比較:
多系統萎縮症(MSA)、進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底変性症(CBD)、レビー小体型認知症(DLB)などは、パーキンソニズムを呈するも、運動症状以外の特徴(自律神経機能障害や早期認知機能障害、垂直方向注視麻痺、左右非対称な皮質症状など)やDATスキャンでのパターン解析、画像上の特徴的変化(例:中脳被蓋部萎縮や小脳萎縮)を手がかりに鑑別可能です。

☑ 薬剤性パーキンソニズム:
抗精神病薬、制吐薬、カルシウムチャネル遮断薬などによるパーキンソニズムは、原因薬剤の中止や変更で改善することが多く、PDとは臨床経過が異なります。

☑ 遺伝性および若年性発症:
LRRK2、PINK1、PARK2(parkin遺伝子)変異など、遺伝的背景を有する若年性PDも存在し、遺伝子検査で診断的手がかりが得られる場合があります。





 

 

パーキンソン病初期症状の多様性と非運動症状


☑ 非典型的初期症状:
嗅覚障害や便秘、RBDなどは運動症状出現以前にみられ、これらの早期非運動症状がPDの前駆状態である可能性が示されています。

☑ 非運動症状の重要性:
抑うつ、不安、認知機能低下、疼痛、自律神経症状(排尿障害、起立性低血圧など)も多くの患者で確認され、患者QOLや診断精度に影響を与えます。

 

 

治療反応性評価による再評価


☑ レボドパ反応性評価:
レボドパへの明確な改善反応はPDの特徴であり、診断にも有用な手掛かりとなります。ただし、後期には反応低下やジスキネジアなど複雑な経過を辿ります。

☑ 症状経過の観察:
治療反応性と症状進行度合いを経時的に観察することで、他の変性疾患や薬剤性との鑑別が可能となります。


  

 

今後の展望と最新研究動向


☑ バイオマーカー開発:
体液中のαシヌクレインや神経フィラメントライト鎖(NfL)、PETイメージングによる早期・正確な診断が期待されています。

☑ 遺伝子解析研究:
LRRK2やGBA変異、また多因子性リスクなど、遺伝的素因に基づく表現型分類と個別化医療の可能性が探られています。

☑ プレクリニカル期診断・疾患修飾療法:
運動症状出現前のプレクリニカルPD段階における早期介入や疾患修飾的治療戦略の開発が進んでおり、診断手法の高度化が期待されています。

 

 

 

まとめ


PD診断は、運動症状(無動を中心とした四大徴候)の確認を基本としつつ、経時的観察、非運動症状や画像・生化学的検査所見の評価、類似疾患の徹底的な鑑別が求められます。最新の研究は、より早期で正確な診断および疾患修飾的アプローチを目指しています。

 

参考文献

Bloem BR, Okun MS, Klein C. Parkinson’s disease. Lancet. 2021 Jun 12;397(10291):2284-2303.
 パーキンソン病の疫学、病因、臨床症状、診断、治療についてレビューしています。

Berg D, Postuma RB, Bloem BR, et al. Time for a new definition of Parkinson’s disease. Mov Disord. 2021 Sep;36(9):1867-1875.
パーキンソン病の定義を再評価し、早期診断や疾患修飾療法の開発に向けた新たな診断基準の必要性を論じています。

Postuma RB, Berg D. Advances in markers of prodromal Parkinson’s disease. Nat Rev Neurol. 2023;19(1):29–44.
 パーキンソン病の前駆期を示すバイオマーカーの進展について詳しく解説しています。

 

 

 

 

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