パーキンソン病になる原因 環境要因について
パーキンソン病と診断された患者は「なぜ私が?」と思うのと同時に、病気を引き起こす可能性のある「何か」にさらされていたかどうか疑問に思っています。ここでは、パーキンソン病の発症に関わる環境毒素、薬物、ウイルスまたは細菌の影響についての知識を紹介します。
工業用毒素
パーキンソン病になる原因として環境毒素が挙げられます。これはエビデンス上はおそらく間違いないだろうというレベルです。これまでの研究で、マンガン粉塵、二硫化炭素、一酸化炭素などの多くの毒素がパーキンソニズムを引き起こすことが示されていますが、パーキンソン病を発症することは示されていません。
パーキンソン病の症状には特徴がありますが、James Parkinsonの1817年論文より前にこれらの症状について言及した医学的文献は驚くほど少ないです。この理由の一つとして、パーキンソン病の頻度が産業革命以来増加しているという説があります。
この考え方が真実であると証明されれば、おそらくパーキンソン病はある種の産業毒素と関連している可能性があります。しかし、パーキンソン病の頻度は1890年代後半から現在の工業化の急速な増加期間に変化していません。さらに、古代エジプトの文書にパーキンソン病の明確な記述があります。
工業化がパーキンソン病の発生を増加させるという考えは、田舎の住民より特定の産業汚染物質に曝露する可能性が高い都市住民が、パーキンソン病を発症する可能性がより高いことを示唆しています。いくつかの報告によると、都市住民の頻度は高いかもしれませんが、さらに他の多くの研究では、田舎での生活がパーキンソン病にかかりやすくすることを示唆しています。
田舎暮らしは、井戸水に含まれる物質などのさまざまな環境曝露を伴います。やはりここでも、はっきりした証拠はないのでわかりません。
環境の研究というのは正確にデザインして実行することが難しいです。環境の研究はパーキンソン病の原因を明らかにする可能性がありますが、多くの環境研究がまだ現在進行中です。特定の毒素がパーキンソン病の原因であると報道されるたびに心配になりますが、これまで同じ毒素について繰り返し研究した結果がはじめの結果を支持するものは一つもありませんでした。
違法薬物
数年前、向精神薬を自家生産しようとしたヒトにパーキンソニズムが生じました。若い麻薬常習者が、意識が高揚した状態を作り出すメペリジンと呼ばれる薬を作っていましたが、彼らは薬の調合を間違え、MPTP(メチルフェニルテトラヒドロピリジン)と呼ばれるヘロイン様化合物を産生してしまいました。
この物質は、黒質のドーパミン産生細胞に急激な損傷を引き起こす可能性があり、薬物を静脈内に注射した若者の一部は、突然(2〜4週間以内に)進行したパーキンソン病の症状を発症しました。
この悲劇は、MPTPが神経細胞をどのように傷つけ、他の類似の物質が我々の環境に存在するか考えさせられる数多くの科学的研究を生み出してきました。
動物モデルにおけるドーパミン細胞のMPTP誘発損傷に関する数十年の検討の後、この範例は再評価されています。これらの研究は、ドーパミン作動性損傷に対する脳の反応を理解するのに非常に有用です。MPTP傷害を受けた動物を他の薬物で治療して傷害を軽減すること(「神経保護」とも言われる)に成功しました。ただ、残念なことに、これらの薬物を使って初期のパーキンソン病の進行を遅らせる実験をしましたが、全て失敗に終わりました。
ウイルスまたは細菌の影響
パーキンソン病があらゆるウイルスや細菌の感染に直接起因するという証拠はありません。非常に稀にですが、脳炎(多様なウイルスに起因する脳の感染症)を発症した人がパーキンソニズムを発症しますが、通常は2,3日から1ヶ月以内に消失します。
歴史的にみれば、ウイルスに関連する可能性があるパーキンソニズムの証拠を見つけることができます。 1917年から1920年までのインフルエンザの世界的流行で、フォン・エコノモ脳炎と呼ばれる病気になった人たちが特定のタイプのパーキンソニズムを発症しました。このうちの何人かは、2〜3年後の夜間に突然パーキンソニズムを発症しました。典型的な脳炎後のパーキンソンニズムの患者とは異なり、これらの患者は寛解しません。一般的に、脳炎はパーキンソニズムを引き起こしますが、純粋なパーキンソン病は引き起こしません。脳炎後のパーキンソニズムについては、Oliver Sacksの著書「Awakenings」(邦題「レナードの朝」)によく描かれています。
パーキンソン病が感染する病気であることを示唆する証拠はありません。パーキンソン病の人の介護をして一緒に暮らしているからといって他の人よりも病気を発症するリスクはみつかっていません。
国家資格(作業療法士取得)
順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務後,
御茶ノ水でリハビリ施設設立 7年目
YouTube2チャンネル登録計40000人越え
アマゾン理学療法1位単著「脳卒中の動作分析」他
「近代ボバース概念」「エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション」など3冊翻訳.
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