パーキンソン病を除外する診断につながる質問
前述してきたように、パーキンソン病はパーキンソン症状を有する病気の中の1つです。パーキンソン病の「類縁疾患」には、進行性核上性麻痺(PSP)、多系統萎縮症(MSA)、レビー小体型認知症(DLB)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、多発微小脳梗塞、アルツハイマー病などがあります。
以下のいずれかの質問に対する「はい」の回答は、パーキンソン病の診断から除外される可能性があり、他の疾患の診断につながります。
– 外科手術後に突然、症状が出てきていませんか?
– 複数回の脳梗塞の履歴がありませんか?
– あなたの両親や祖父母、子供または兄弟にこのような病気の病歴の人はいませんか?(家族歴は、かつてはパーキンソン病と他のパーキンソニズムとを区別することには有用ではないと考えられていましたが、現在は、パーキンソン病のいくつかの遺伝型は認識されています。実際に、遺伝的要因は他のパーキンソニズムの原因よりも、パーキンソン病でより一般的です。)
– (例えば職場などで)マンガンを含む毒素に曝露したことはありませんか? 一酸化炭素中毒になったことはありませんか? 違法薬物を使用したことはありませんか? クロルプロマジン(Thorazine)、チオリダジン(Mellaril)、ハロペリドール(Haldol)、ペルフェナジン/アミトリプチリン(Triavil)、またはトリフロペラジン(Stelazine)などの精神安定剤を服用していませんか?
– リスペリドン(Risperdal)、オランザピン(Zyprexa)、クエチアピン(Seroquel)、アリピプラゾール(Abilify)、ジプラシドン(Geodon)などの「非定型」精神安定剤を服用していませんか?
– 胃腸薬のメトクロプラミド(Reglan)を服用していませんか?
– 友人や家族から、人格が変わったと言われたことはありませんか?
– ついさっき起こった出来事を覚えていないことがありませんか?
– 家族は、いままでよりあなたが混乱しているように思うことがありませんか?
– 目を動きに問題はありませんか? あるいは、一般的な視覚障害はありませんか?
– 症状が出現してからすぐに、バランスの問題が出てきたり、転倒したりすることがありませんか?
– 症状が出現してからすぐに、発話が難しくなりませんでしたか?
– 症状が出現してからすぐに、飲み込みが難しくなりませんでしたか?
– 症状が出現する前、または出現してからすぐに、立ち上がる際に立ちくらみのような気分が遠のく感じはありませんでしたか? 排尿のコントロール障害はありませんか? 男性は性的不能(インポテンツ)ではないですか?
– ゆっくりとした動きや筋の硬さ、表情変化の少なさ、歩行障害のほとんどがありますが、振戦はまったくありませんか?
特徴的な安静時振戦がない場合、パーキンソン病の可能性は低いです。症状の発症時から完全に対称的である場合、パーキンソン病の可能性は低くなります(ただし、パーキンソン病患者に対称的な症状がみられ、非定型のパーキンソニズムに非対称性がある場合もあります)。
また、症状が抗パーキンソン病薬に反応しない場合、おそらくパーキンソン病ではありません。ある種の薬剤、特に統合失調症の治療に使用される薬剤は、パーキンソニズムを引き起こし得ますが、パーキンソン病は引き起こすことはありません。
軽度のパーキンソニズムを有する人は、通常、時間の経過とともに、正確な診断のための重要な手がかりとなる追加症状を発症します。以下の要約は、いくつかの症状とそれらが示すかもしれないパーキンソン類縁疾患に関する情報を提供しています。
1. 記憶や性格の変化といった認知機能低下の問題は、おそらく通常ではパーキンソン病では何十年も経過するまで起こりません。パーキンソン症状がある人の家族は、患者が最近の出来事のことを忘れてしまっていることに気付くことがあります。例えば、40〜50年前の出来事は非常に正確に思い出すことができるかもしれませんが、最近の出来事で混乱してしまう可能性があります。人格の変化は、消極的な姿勢や攻撃性の増加、趣味への関心の低下、社会性の低下など、さまざまな形で現れます。これらの症状が出現した場合、レビー小体型認知症やアルツハイマー病などの障害である可能性があります。
2.症状を抱えている人やその家族は、食べ物を食べる時に視線をお皿に向けることや階段を上ったり下りたりする時に足元を見ることが難しそうに見えることがあります。これらの眼球運動障害は、軽度のパーキンソニズムと発症早期から転倒を繰り返すことで、進行性核上性麻痺を示唆しています。
3.初期の徴候として自律神経系の機能不全を有する人もいます。これには、重篤な泌尿器系の障害や起立時の立ちくらみ(血圧の急激な低下)、男性では勃起不全が含まれます。これらの症状は、多系統萎縮症の兆候である可能性があります。
以下の質問は、医師が非定型パーキンソン病を純粋なパーキンソン病と区別するときに役立ちます。
– 目を上下に動かすことが難しくありませんか?
– 病気の早期から発話に顕著な不明瞭さがありませんか?
– 何か取ろうとして手を伸ばす際には顕著な振戦がありますが、動かしていない時(休んでいる時)はそれがなくなりませんか?
– 頻繁にバランスを崩したり、転倒を繰り返したりする重度の歩行障害はありませんか?
– 椅子から立ち上がるときに立ちくらみやめまいがありませんか? もしそうなら、血圧の変化を伴う立ちくらみではありませんか?
– (抗パーキンソン病薬を使用していないときに)痙攣や踊りのように体がねじれる動き、口をずっと咀嚼運動しているような異常な不随意運動はありませんか?
再度、これらのいずれか質問に対する「はい」の答えは、その人がパーキンソン病以外の疾患を有していることを示唆しています。
国家資格(作業療法士取得)
順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務後,
御茶ノ水でリハビリ施設設立 7年目
YouTube2チャンネル登録計40000人越え
アマゾン理学療法1位単著「脳卒中の動作分析」他
「近代ボバース概念」「エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション」など3冊翻訳.
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