中期パーキンソン病の運動症状
振戦
手や足、口周りの振戦や不随意な律動的な揺れはパーキンソン病の最も一般的な症状および徴候であるが、パーキンソン病の患者様のなかには振戦が起こらない人もいます。パーキンソン病の患者様の75%は、振戦の出現から病気がはじまります。手や腕から始まる可能性が最も高いです。脚が影響を受けることもあり、頻度ははるかに少ないですが顔からはじまる人もいます。
パーキンソン病の振戦は、一般に“安静時振戦”と呼ばれ、手が完全に休息しているときに最も重篤になる非常に特殊な特徴を持っています。この振戦は通常、カップに手を伸ばすときやフォークを握るとき、文字を書いているときなどの課題を行っているときに、減少したり完全に消滅したりすることがあります。中程度から重度の安静時振戦を持つ人たちでさえ、ボタンを締めるときやペンで紙に何か書くときには震えが著しく減少することがよくあります。
以前に述べてきたように、病気の非常に早い時期では振戦は内的に感じるものであり、医者や患者様には何の動きも見えていません。パーキンソン病患者様がはじめに振戦に気づくときは、座っていて膝に手を置いたり、腕を自然に振りながら歩いているときが多いです。
他人がはじめに気づくときは、静か座って新聞を読んでいるときやパソコンの画面をじっと見て考え込んでいるときに、親指を含めた手指が震えているときかもしれません。目に見える振戦は、親指を含めた手指の不随意運動から始まります。
親指と人差し指でビー玉を転がす様子に似ています(本邦では“丸薬丸め様運動”などと言われています)。また、振戦は手首の反復的な回転運動やつま先または足首の動き、時には唇の周りの動きを伴うことがあります。
以前も記載しましたが、振戦はほとんど身体の片側から始まります。時間の経過とともに、片側から発症した振戦は両側に影響する振戦へと悪化します。
振戦は、指先などの身体のある一部分から発症しやすいです。その後は常に身体の同側の他の領域に進行していきます。たとえば、右手で振戦が始まると、左半身に影響を及ぼす前に右足に広がる可能性が高くなります。振戦は、はじめはストレスや疲労に応じて一瞬起きたり、断続的に現れたりします。しかし、時間がたつにつれて、起きている間ずっと目立つ様になり顕著な症状となってきます。
パーキンソン病のどの段階においても、振戦はその日の中でも変化します。感情状態や睡眠パターンの変化は、振戦に重大な影響を与えます。感情的な動揺は、怒り、不安、熱中しているときや性的興奮から生じる場合があり、振戦を悪化させることが多いです。
振戦の悪化は一時的なものであり、決してパーキンソン病の経過を変化させるものではありません。パーキンソン病の人は、感情の動揺が振戦を悪化させるので、病気を制御する一環として動揺したり、興奮したりすることを避けようと努力しなければならないと思っていることがあります。
これは不可能なことであり、事実ではありません。パーキンソン病患者様が普通の感情状態に戻ると、振戦も同様に「正常」な状態に戻ります。感情状態の上昇は軽度の振戦を中等度に、中程度の振戦を重度にしますが、振戦の増強は、感情的な興奮の状態と同程度しか持続しません。
振戦も睡眠の影響を受けます。パーキンソン病患者様が完全に眠っているときに振戦は完全に落ち着きます。しかし、目覚めた瞬間(またはその直前)には、振戦が再び出現します。したがって、睡眠は、振戦の漸増および減弱に関連しています。
振戦の起源が精神医学的な要因である証拠として、この振戦が変動することを言う人もいます。もちろん、この考え方は間違いです。パーキンソン病に精通した医師や患者様も、睡眠、覚醒、および感情状態がパーキンソン病に関連する振戦における深い影響を認識しています。
一部のパーキンソン病の人にとって振戦は、人目につくことが非常に恥ずかしく感じたりして、困惑する原因となる症状です。もし、振戦によって社会的状況で不快になったり、心理的苦痛を引き起こす場合、薬剤による治療を開始したり、薬剤の調整をする理由となる可能性があります。
振戦は毎日の活動に支障をきたすため、障害となることがありますが、たいていは振戦によって普通に生活ができなくなるようなことはありません。振戦は、通常周りからすると迷惑で注意を引きつけてしまう傾向があります。
パーキンソン病の中心的な問題として振戦に焦点を当てている人がいますが、手の器用さの問題の本当の原因は、筋強剛と動作の緩慢さです。ある研究(パーキンソン病の特定の症状が障害に及ぼす影響を追跡した臨床研究)によるとパーキンソン病のすべての症状および徴候のうち、振戦が障害を引き起こす可能性が最も低いことを示していました。それは時に、他の初期の特徴よりも治療に対してより抵抗性があるのかもしれません。
国家資格(作業療法士取得)
順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務後,
御茶ノ水でリハビリ施設設立 7年目
YouTube2チャンネル登録計40000人越え
アマゾン理学療法1位単著「脳卒中の動作分析」他
「近代ボバース概念」「エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション」など3冊翻訳.
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