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目次
股関節可動域制限が歩行に与える影響
股関節周りの手術をした場合、外転筋の短縮を起こしやすくなってしまいます。
なぜ短縮を起こしやすくなるのかというと、例えば股関節の人工骨頭置換術をした場合、中殿筋や大腿筋膜張筋といった外転筋を切ってしまう(切開)することが多いです。
そして手術後は切開した中殿筋などの外転筋が癒着して固くなってしまうことが多いです。その結果、股関節の内転の関節可動域制限(ROM制限)に繋がります。
この股関節の内転の可動域制限があると日常生活において歩行が不安定になりやすいです。
ではなぜ股関節の内転可動域制限があると歩行が不安定になりやすいのかというと、下肢の安定には腸脛靭帯の張力が必要となってきます。
腸脛靭帯は片足立位や骨盤や足を安定させる作用がありますが、内転の制限があることで靭帯の張力が低下してしまい、安定性が低下してしまします。
そしてもう一つは中殿筋の筋力が弱くなってしまうことが原因と言われています。
中殿筋の筋力は股関節が「軽度内転位」で最大になると言われています。そのため股関節の内転可動域が制限された場合、中殿筋の筋力を最大限発揮できなくなってしまい、歩行が不安定になってしまう可能性があります。
家族でできる可動域練習
股関節の内転筋群の可動域練習(膝立て位)
対象となる膝を立てた状態にしておきます。
その状態から膝のお皿が外側を向くように膝を倒していきます。
10秒ほどを目安にしっかりと外側に倒し内転筋群を伸ばしてあげます。
その際に反対側の骨盤が浮いてこないように、対象とは反対側の骨盤を抑えておくとより効果的に股関節の内転筋群を伸ばすことができます。
股関節の外転筋の可動域練習(膝立て位)
股関節の内転筋のストレッチの時と同様に対象となる足の膝を立てます。
その状態から今度は対象となる足と同じ側の骨盤に手を当てて骨盤が動かないように抑えてあげます。
抑えていないと骨盤が浮いてきてしまうためしっかりとおさえてあげます。
そして立てている足の膝が内側に向くように膝を倒していきます。10秒を目安にしっかり伸ばしたら戻していきます。
しっかりと骨盤を抑えて膝を内側に倒していくことで、大腿の外側の筋肉を効果的にしっかりと伸ばすことができます。そのため骨盤をしっかりと抑えることが重要になります。
股関節の外転の可動域練習(背臥位)
まずは仰向けの状態で対象となる足を外転方向(外側)に開いていきます。
開いた側と反対の足を片手でしっかりと止めておきます。そして、先ほど開いた足をさらに外転方向(外側)へ開いていきます。
そうすることで足の内側全体が伸ばされるため、このような形で外転の可動域を出していく練習もあります。
股関節の内転の可動域練習(背臥位)
背臥位(仰向け)での股関節の内転の可動域練習を行う場合は、外転と同じくまず仰向けの姿勢になります。
そして対象となる足の側の骨盤をしっかりと抑えて、膝関節を伸ばしたまま股関節を屈曲(天井の方向へ持ち上げる)させます。
膝を伸ばし持ち上げた状態のまま、足を内側に向けて伸ばしていきます。
この時、実施する人は自分の体を足と足の間に入れてあげると持ち上げやすくなると思います。
骨盤をしっかりと抑えたまま、実施する人の体で足を内側に押し込んでいくと、より股関節の外側側が伸長されて内転方向への可動域が出てくる可能性があります。
中殿筋の可動域練習
姿勢は大腿筋膜張筋の可動域練習と同じく側臥位で下の足を90°屈曲させ、その足の上に手を置いた姿勢で行います。
そして先ほどの大腿筋膜張筋の時と同様に対象となる足の膝を伸ばしたまま、股関節を外転させます。骨盤が前方に転がっている状態のまま股関節を伸展(後ろに伸ばしていく)させます。
そしてそのまま内転(下のほうへ降ろしていく)させていきます。そうすることで中殿筋をダイレクトにストレッチすることができます。
大腿筋膜張筋の可動域練習
まず対象となる足が上になるように側臥位(横向きの姿勢)になります。その際に下のほうの足は膝を曲げてその上に手を置いておきます。
対象となる膝を伸ばした状態のまま外転(天井の方向へ持ち上げ)します。外転した状態のまま股関節を伸展させていきます。
そして伸展させた状態のまま股関節を今度は内転方向に足を降ろしていくことで大腿筋膜張筋へのダイレクトなストレッチを行うことができます。
股関節外転とは?
股関節の外転とは足を外に開いていく動きのことです。
主な股関節の外転を起こす筋肉は、中殿筋、大殿筋、大腿筋膜張筋などがあります。
中殿筋
小殿筋
大腿筋膜張筋
股関節内転とは?
股関節の内転とは足を閉じる動きのことです。
股関節の内転を起こす筋肉は、大内転筋、長内転筋、短内転筋などの内転筋群があります。
長内転筋
長内転筋は股関節の角度によって屈曲(股関節を前に曲げる動作)と伸展(股関節を後ろに伸ばす動作)の作用が逆転します。
短内転筋
短内転筋も長内転筋と同じく、股関節の角度によって屈曲と伸展の作用が逆転します。
大内転筋
大内転筋は起始部によって内旋(足を内側にひねる動作)と外旋(足を外側にひねる動作)が変わります。
股関節可動域テスト
股関節外転
基本軸は両側の上前腸骨棘(ASIS)を結ぶ線への垂直線となります。上前腸骨棘は骨盤の前方の出っ張り(赤丸)の部分のことを言います。
参考可動域は45°となります。
移動軸は大腿の中央線になります。つまり上前腸骨棘から膝のお皿の中央を結ぶ線となります。
基本軸・移動軸がわかったら、足を外側に開いていく動きを促します。
足を外に開くときは、足が外側や内側に転がらないように足は中間位(足先が天井を向き、膝が真上を向いた状態)のまま動かします。
足が転がらないように注意しながら開いていき、反対側の骨盤や腰が浮いてこないところで足がこれ以上開かないという軽い抵抗感(エンドフィール)を感じるところで止めます。
ここで基本軸の上前腸骨棘を結んだ線への垂直線と移動軸である大腿の中央線へゴニオメーター(可動域計)を合わせます。この時の角度が45度以下であれば関節可動域制限があるという判断になります。
また別の方法としてまず両側の上前腸骨棘を結んだ線にゴニオメーターを当てます。
そこから移動軸である大腿の中央線に当てていきます。
その時の上前腸骨棘を結んだ線からの90°のラインから、大腿の中央線までの角度を測ることでも股関節外転の可動域を測定することができます。
こちらの測定方法のほうが両側の上前腸骨棘に当てているため基本軸がブレにくいため、このように測定してもよいかと思います。
股関節内転
股関節内転は、外転とは逆に足が内側に動いていく動きになります。反対の足を屈曲させその下を通してあげる動きとなってきます。
そのために計測する方は自分の足で計測しない足を持ち上げておくと測定がしやすくなります。
参考可動域は20°と外転より狭くなります。
基本軸と移動軸は外転の可動域測定の時と同様、基本軸が両側の上前腸骨棘を結んだ線への垂直線、移動軸は大腿の中央線となります。
測定する側の足を反対の足の下を通して足が転がらないように注意しながら足がこれ以上動かないという軽い抵抗感(エンドフィール)を感じるところで止めます。
その場所で足をキープしながら基本軸である両側の上前腸骨棘を結んだ線への垂直線と移動軸である大腿の中央線へゴニオメーターを当てます。
この時の角度が20°以下だった場合、股関節内転可動域制限があるという判断になります。
大腿筋膜張筋の短縮を評価するテストにOberテスト(オーバーテスト)があります。
股関節を少し外転気味(天井に向かって持ち上げるように)にし、膝を90°曲げます。そして股関節を伸展位にした状態から股関節を内転(反対の足に近づけていく動き)する動きを出していきます。
この時、股関節が下まで降りていかない時は大腿筋膜張筋に短縮があると判断できます。
変法として、下側の膝を90°曲げた状態で、上の足は先ほどと同様に、股関節を少し外転させ、膝を90°屈曲、股関節を進展させます。
そこから股関節を内転させていった際に下までつかなければ大腿筋膜張筋の短縮があると判断できます。
国家資格(作業療法士取得)
順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務後,
御茶ノ水でリハビリ施設設立 7年目
YouTube2チャンネル登録計40000人越え
アマゾン理学療法1位単著「脳卒中の動作分析」他
「近代ボバース概念」「エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション」など3冊翻訳.
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