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心臓と脳の関係性
私たちは通常、心拍に気が付くことはありません。明らかに、私たちの脳は心臓の知覚に気づかないようにしています。なぜ、どのように起こるのか、ほとんど分かってはいませんが、The Journal of Neuroscienceに掲載された新しい研究では、私たちの心拍の沈黙 (silencing of heartbeat)の根底にあるメカニズムが明らかになりました。
心臓は、受精後わずか2週間、胚発生の非常に早い時期に形成されます。約1週間後、心臓が鼓動して心室が形成され、さらに1週間経過すると、血液はすでに160拍/分の速度で胚を流れています。胚発達のこの段階では、脳はまだ形成段階途中であり、何かを知覚する前から心臓の鼓動が存在していると言っても過言ではありません。
脳と視覚処理の関係性
最近の研究では、いわゆるインターセプト(内部)信号、特に心拍の効果を視覚的認識に広げることが行われています。視覚認識課題を用いて、脳イメージング技術と共に、心拍がどのように視覚刺激の知覚を調節することができるか研究されました。結果は非常に興味深いものでした。
被験者には、点滅する黄色の八角形からなる視覚刺激が提示されました。視覚刺激が心拍に非同期的に提示された場合、参加者はターゲット画像を黄色の八角形として直ちに識別することができ、視覚刺激に対して明確な影響を有することが示されました。しかし、画像が心拍と同じリズムで点滅していたときには、参加者は黄色の八角形を認知するのに時間がかかりました。
心拍と視覚の統合に関与する島皮質(insular cortex)
fMRIを用いた実験では、この心臓 – 視覚同調(cardio–visual synchrony)に敏感であった脳内の領域が存在することを示しました。対象画像が心拍と非同期に点滅し、被験者がそれらを容易に知覚すると、島皮質は正常な機能を示しました。一方で、点滅が同期していて被験者が標的画像を認識していなかった場合、島皮質は活動的ではありませんでした。脳のこの領域は、内的および外的信号の統合を可能にし、自己認識および身体知覚の基礎となると考えられています。
したがって、この研究で示されたことは、内部の心臓信号と一致する視覚刺激の処理が、脳によって無意識に回避される傾向があることでした。また、心拍は、聴覚的、触覚的、または痛みを伴う刺激などの他の感覚刺激にも影響し得ることが以前に示されています。
著者が示唆しているように、これは心拍を監視しつつ、外部情報を知覚する矛盾する要件が原因である可能性があります。心拍と同じリズムで提示される感覚情報を選択的に阻止することは、外部からの事象に対する感覚的知覚の中に内的知覚が侵入するのを防ぐために、心臓を知覚から遠ざけるメカニズムとなる可能性があるようです。
私たちが心臓を意識する際は過度な動悸の場合のみで、例えば、恐怖や不安の文脈で起こることが多く、それは決して楽しいものではありません。
脳は身体の多くの領域からの入力を随時処理しています→こちらより引用
編集部コメント
心拍と視覚や体性感覚の同時処理は脳に一時的に負担をかけ、処理に時間がかかるのかもしれません。身体内部情報や外界情報を効率よく処理するためには、普段意識しない状態にしておき、状況に応じて重み付けをコントロールするのが脳だと考えます。
Reference
Salomon, R., Ronchi, R., Donz, J., Bello-Ruiz, J., Herbelin, B., Martet, R., Faivre, N., Schaller, K., & Blanke, O. (2016). The Insula Mediates Access to Awareness of Visual Stimuli Presented Synchronously to the Heartbeat Journal of Neuroscience, 36 (18)Anil K. Seth, Karl J. Friston(2016).Active interoceptive inference and the emotional brain. royalsocietypublishing 10 October
国家資格(作業療法士取得)
順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務後,
御茶ノ水でリハビリ施設設立 7年目
YouTube2チャンネル登録計40000人越え
アマゾン理学療法1位単著「脳卒中の動作分析」他
「近代ボバース概念」「エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション」など3冊翻訳.
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