自律神経系は、消化吸収系、体温制御系、腺分泌系、ホルモンなどのいくつかの身体機能を意識することなく管理します。パーキンソン病は、自律神経系を弱めて様々な症状を引き起こす可能性があります。
便秘
便秘はパーキンソン病患者に一般的な症状です。便秘は厄介で、とても深刻な問題となる可能性があります。パーキンソン病患者は排便が出ない事が多く心配になることがよくあります。
まず、便秘はパーキンソン病でない人たちでも加齢により、一般的に起こるということに注意する必要があります。しかし、パーキンソン病では、胃腸の働きは確実に遅くなり、胃の内容物の排出や腸の動きがますます遅くなります。
実際、便秘はパーキンソン病の他の症状の発症よりも何年も前に現れている可能性があります。消化管の運動(腸管を通じた物質の移動)は毎日の運動によって増強されるため、歩行やバランスの問題によりパーキンソン病の人が体を動かさなくなると、腸の動きが遅くなるという問題も悪化します。さらに、パーキンソン病の運動症状を治療するために使用される多くの薬剤は、腸の動きを遅くさせる効果があります。
生活習慣や日常生活の簡単な変化で、多くの場合、問題を緩和することができます。ほとんどのパーキンソン病患者は、朝食時に多くの食物繊維を(自然に腸を活性化させるプルーンやコーヒーと一緒に)食べることによって午前中に排便の反射を活性化させて、その後、快適なペースで朝の散歩に行くことで腸機能を改善することができます。
パーキンソン病患者は、少なくとも5〜6杯の水を十分に飲むようにして、食事の繊維質(食物繊維)を増やしましょう。また、食物繊維が豊富なサプリメントや便軟化剤も役に立ちます。これらの対処でうまくいかなければ、下剤が有効となるでしょう。最も重要なことは、頻繁にではないが定期的に排便を監視する必要があるということです。
重度の便秘は、医療的に緊急事態とされる腸閉塞を引き起こす可能性があります。定期的な排便がなくて心配している時は、医者に相談するか診察を依頼してください。
下痢
パーキンソン病治療薬および抗パーキンソン病薬はめったに下痢を引き起こしません。この理由から、下痢を発症した時は、ほとんどの場合それが薬物以外のものによって引き起こされていると仮定し、腸に影響する他の病気を探すべきです。
例外として、時に下痢を引き起こす薬剤、COMT阻害薬:エンタカポン(商品名コムタンおよびスタレボとして発売されています)があります。重度の状態では、急激な下痢症状があり得ます。エンタカポンを飲んでいて下痢がある場合は、必ず医師に伝えてください。
下痢の異なるタイプとして、極度の便秘の合併症があります。重度の便秘の場合、腸の中にしばらく残っている便は、非常に硬く、乾燥した状態で詰まっており、腸のほとんどを閉塞することがあります。液状の便は、糞塊の周りを流れていき “溢流性失禁”と呼ばれる下痢の一種を引き起こします。糞塊が除去されれば「下痢」は止まるでしょう。
性機能障害
パーキンソン病患者は、器用さが低下したり、自発的な動きが少なくなったり、体位の変化が困難になったり、興奮すると振戦が増加したりするため、性的経験に苦しむことがあるかもしれません。これらのことを理解して安心させてくれる性的パートナーは、これらの障害を助けてくれます。興奮が落ち着くとすぐに、振戦も落ち着きますし、振戦が増加しても危害はないことを忘れないでください。
パーキンソン病の男性の中には、性的勃起して維持することが困難な人がいます。この問題は、早期または中等度のパーキンソン病で発生する可能性がありますが、進行期ではやや高い可能性があります。非常に早期の勃起機能の著明な消失は、パーキンソニズムとは異なった原因を示唆しているかもしれません。
勃起不全に対して一般的に有用な薬物(例えばバイアグラ)は、パーキンソン病の男性にも有益であることが多いです。パーキンソン病の女性に関連する性的問題についてはほとんど研究がされていないためわかっていません。
膀胱機能不全
中等度のパーキンソン病患者の中には、排尿障害の人もいます。頻尿や尿意切迫、尿保持の障害などの排尿障害があり、不随意性排尿と呼ばれています。 「過活動膀胱」に役立つ薬剤は有益かもしれません。
泌尿器科医に診察してもらうことで、男性の前立腺肥大や女性の膀胱脱のようなその他の要因を特定するのに役立つでしょう。膀胱機能障害は疾患の進行期の可能性が高く、疾患の早期において顕著である場合には、パーキンソン病以外の診断を疑うべきでしょう。
発汗
理由もなく過度に発汗するといった発作は珍しい症状です。おそらく、体温調節を制御する自律神経系が不安定な状態になることによって起こります。これらの発作は非常に急激である可能性があります。パーキンソン病の人たちは、身体活動のレベルや温度にかかわらず、突然大量に発汗することを報告しています。
汗は数分から20分程度続くことがあり、服を着替えなければならないほど濡れることがあります。いつもとは限りませんが、肌が赤くなったり、紅潮したりすることもあります。
過度の発汗は、より進行期パーキンソン病患者やパーキンソン病に対する複数の薬物療法を受けている人たちにおいて、起こりやすい症状です。レボドパ/カルビドパ(メネシットやマドパーなどの薬剤)の量を減らすと、これらの発作を緩和するのに役立ちます。
発汗は、投薬水準が低い「オフ」期間に生じることが多いです。しかし、多くの人々は、投薬のタイミングと発汗する事実の間にはほとんど相関がないと見出しています。一過性の発汗は、投薬を調整しなくても、発汗が消失するか自然に改善します。
国家資格(作業療法士取得)
順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務後,
御茶ノ水でリハビリ施設設立 7年目
YouTube2チャンネル登録計40000人越え
アマゾン理学療法1位単著「脳卒中の動作分析」他
「近代ボバース概念」「エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション」など3冊翻訳.
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