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9時間目:運動症状発症前の前駆症状
パーキンソン病は、主に中脊黒質におけるドーパミン作動性神経細胞の損失を特徴とします。この病気には多様な前駆症状が含まれ、文字書能力の変化や小字症はそれらの中でも重要な要素です。その他のパーキンソン病における非運動症状の出現についてはこちらで詳しく解説しています。
渦巻きを描く能力の低下
渦巻きを描く能力の低下は、PD患者における運動の開始や継続、調整の困難さを反映しています。これらの障害は以下のような病態に基づいています:
・運動開始の困難(無動・寡動): ドーパミン作動性ニューロンの減少により、基底核-皮質ループが障害され、意図的な運動の開始が遅れます。
・運動の滑らかさの低下: 筋固縮や運動のリズム性の喪失により、一定の速度で連続した動きを維持することが難しくなります。
・振戦: 静止時振戦が渦巻きの線を不規則にし、形を維持する能力を低下させます。
渦巻き描画テストの意義
渦巻きを描くタスクは、PD患者の運動制御能力を評価するための簡便な方法として臨床で使用されます。
・テスト方法: 被験者に白紙や指定された渦巻き模様をトレースするよう指示します。トレースの精度、速度、線の滑らかさを観察します。
・評価項目:
線のゆがみ:線がどれほど正確に渦巻きの形状を維持しているか。
速度のばらつき:描画中の速度が安定しているかどうか。
筆圧の変化:筆圧が不均一な場合、筋力制御や感覚フィードバックの問題を示唆します。
小字症の疾患理論
小字症とは、文字を書く際に文字が異常に小さくなる現象を指し、パーキンソン病患者の50-70%に認められると報告されています。この現象は、無動、筋固縮、さらには手の精密な運動制御の障害が主な原因とされています。ドーパミンが関与する基底核の機能不全により、意図的な運動の開始および計画が困難となり、これが小字症の特徴的な症状を引き起こす要因と考えられます。
診断方法
小字症の診断には、実際に書かれた文字を解析する方法が有効です。方法は以下の通りです。
・連続書字試験:特定の文字を連続して書かせ、その文字の大きさと縮小率を測定する。
・文章書字試験:短い文章を書かせ、各文字の大きさや行間、文字間隔を解析する。
・デジタルペンの使用:壁力センサーや加速度計を搭載したデジタルペンを使用することで、筆圧、書字速度、運動軌跡などの詳細なデータを収集する。
治療・リハビリテーション方法
小字症に対する治療は、薬物療法とリハビリテーションを組み合わせて行われます。
・薬物療法:レボドパやドーパミンアゴニストなどを投与することで、ドーパミン作動性神経伝達を補充し、運動症状の改善を図ります。ただし、小字症に対する効果には個人差が大きいとされています。
・書字訓練:マス目のある用紙を使用し、一定の大きさで文字を書く練習を行う。解析結果から視覧的フィードバックを生かした訓練が有効です。
参考文献
1.Quantitative Analysis of Bradykinesia and Rigidity in Parkinson’s Disease
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29568281/
2.Digitized analysis of handwriting and drawing movements in healthy subjects: methods, results and perspectives
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0165027099000801
3.Validity and reliability of a new tool to evaluate handwriting difficulties in Parkinson’s disease
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28253374/
4.Neural correlates underlying micrographia in Parkinson’s disease
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26525918/
5.Gender-related differences in the burden of non-motor symptoms in Parkinson’s disease
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22237822/
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