ページトップへもどる

HOME > パーキンソン病 > 病態の理解 > 50〜70%の黒質が壊死するまで大丈夫!?パーキンソン病の脳内変化について

2017.01.08 パーキンソン病

50〜70%の黒質が壊死するまで大丈夫!?パーキンソン病の脳内変化について

 

 

脳内変化に関して

 脳は、大脳、小脳、脳幹に分類される。パーキンソン病では、脳幹に属する中脳の「黒質(こくしつ)」という部分と、大脳の大脳基底核(だいのうきていかく)にある「線条体(せんじょうたい)」という部分に異常が起こっていることが明らかになっている。

 

 

脳の中で何が起こっているのか?

パーキンソン病では、黒質と言われる脳領域のニューロン(神経細胞)が主に障害されます。黒質のニューロンが変性すると、身体を動かすための脳の活動が途絶えてしまい、それよってパーキンソン病の振戦や筋強剛、無動(活動の不足や自発的な運動の喪失)および動作緩慢(動作の遅さ)、歩行や姿勢の問題といった特徴的な徴候および症状が生じます。

 

ただし、病気の進行期には脳の他の領域も影響を受けます。脳疾患の症状は、変性したニューロンの部位によって決定します。パーキンソン病において冒されたニューロン(特に黒質部位)は、運動活動(動作)の制御および調節に重要な脳の領域です。

 

パーキンソン病を発症するまで

 黒質は脳の深部に位置する非常に小さな領域です。パーキンソン病の症状は黒質細胞の50〜70%が壊死するまで顕著にはなりません、なぜなら人間の神経系には多様な代償機能が備わっているからです。一定の期間は、壊死している細胞の活動を代償することができます。

 

黒質の変性

 パーキンソン病患者の検死解剖では、黒質が通常の黒色色素を失っていること以外は、比較的正常であるように見えます(図)。顕微鏡下では、黒質に残った細胞は異常な徴候を示していることが多いです。

 パーキンソン病の特徴として黒質細胞内にレビー小体という小さな細胞が存在しています。

黒質の役割

 黒質というのは、運動中枢(運動を制御する脳の中枢)との重要な接続があるため、我々がどのように動くかというときに不可欠な構成要素です。

 

脳内では一連の複雑なやりとりをニューロンからニューロンへ情報を伝達します。脳細胞の間を伝達するために用いる化学物質は“神経伝達物質”または、より一般的には“神経化学物質”と呼ばれています。

 

黒質で産生され使用される特定の神経伝達物質を“ドーパミン”と言います。黒質の細胞が変性して壊死すると、ドーパミンが生成されなくなってしまうためドーパミンによって中継される情報が運動中枢に伝わらなくなってしまいます。これがパーキンソン病におけるほとんどの運動症状の主要な原因です。

 

 

パーキンソン病の画像診断

 最近の画像診断技術の進歩は、生前に黒質のドーパミン作動性細胞の可視化を可能にしています。陽電子放出断層撮影法(PET)や単一光子放射断層撮影法(SPECT)など、いくつかの種類で画像化することができています。

 

 SPECTの特殊なタイプとしてDATScanがあります。この検査で正常と異常なドーパミン経路を区別することができますが、診断に役立つかどうかはまだ分かっていません。

 

図 MRI画像にPETスキャンを重ねた画像。 左の図の太い矢印は、線条体のドーパミンニューロンの末端におけるドーパミン貯蔵を示しています。右の図に示すパーキンソン病では、特に被殻において末端のドーパミンが失われる。パーキンソン病では、通常画像の下部の喪失に注意しなくてはなりません。

 

 

黒質以外の変性

ドーパミン生成細胞の喪失は、パーキンソン病における主要な神経学的障害ですが、神経学的障害は黒質の細胞およびドーパミンの喪失だけではありません。脳内の他の小さな神経核(例えば、迷走神経背側運動核や青斑核と呼ばれる領域)も変性の影響を受けます。

 

パーキンソン病で脳内のドーパミン濃度が低下するとノルエピネフリン(ノルアドレナリン)やセロトニンといった神経伝達物質の濃度も変化しますが、これらの他の神経伝達物質の変化はドーパミンの損失ほど重要ではありません。

 

しかし、これらの神経伝達物質や細胞の変化は脳内で広がっており、パーキンソン病によって引き起こされるすべての問題がドーパミンの補充で修正できない理由を説明しているかもしれません。つまり、ドーパミン補充は動作の緩慢さや筋強剛に対して非常に有用であるが、一般的にバランスの改善には有用ではありません。

 

神経変性の原因は?

 神経学的障害がパーキンソン病の症状を引き起こすということはわかっていますが、その分野の広範な科学的研究が行われているにもかかわらず、神経変性を引き起こす原因はいまだ分かっていません。そのため、パーキンソン病は特発性(原因不明)と言われることがあります。

 

ドーパミンの役割

 脳の神経伝達物質の中でも特にドーパミンは、中枢神経系からの筋肉の制御において非常に重要であるため、これらの神経伝達物質の供給が不足すると、筋肉がおかしな動きになります。

 脳から筋肉への伝達が不十分になると動きも遅くなります。筋肉は素早く流動的な動きや自然な動きができなくなってしまいます。

 こうなると筋緊張を制御する中枢メカニズムは、立つ、歩く、そしてバランスをとるのに必要な繊細な筋肉の相互作用に適切に機能しません。

 さらに、パーキンソン病は自律神経系(体温調整、消化器系、性機能、膀胱のコントロールなどその他の機能も含めて大部分を無意識下で制御するシステムのことを言います) にも影響を及ぼすことがあります。

 

 

 

 

病態理解の記事一覧はこちら

 

Previous Post Next Post

FOLLOW US

脳リハ.comの記事は各ソーシャルメディアでも配信中。
今すぐフォローして最新情報をチェックしよう!

脳リハ.comの記事は各ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしよう!

FOLLOW US

脳リハ.comの記事は各種ソーシャルメディアでも配信中。今すぐフォローして最新情報をチェックしよう!

POPULAR POSTS

CATEGORY

脳卒中

パーキンソン病

脳科学Topic

News

RECENT ENTRIES

Copyright c 2016 脳リハ.com Rights Reserved.

無料
カウンセ
リング

お申込み・ご質問・ご相談など 各種お問い合わせ

無料カウンセリングの
お申込み